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星ナビ機材セレクション

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星ナビ 2006年8月号

レポート/川村 晶

2006年8月22日

骨太な構造の内骨格方式

スカイポッド本体は、水平軸を中心とした円筒に垂直軸を張り出させたような外観で、曲面と平面がバランスよく組み合わされている。カラーリングは、白を基調とし、STAR BOOK-TypeSとバランスウェイトを収めるウェイト軸キャップがスケルトンブルーの素材で作られていて、デザイン上のアクセントとなっている。

電源は、STAR BOOK-TypeS用に単3型アルカリ乾電池4本とスカイポッド用に単3型アルカリ乾電池8本を必要とする。STAR BOOK-TypeSは、液晶画面の背面側に電池ボックスを装備し、スカイポッドにはSTAR BOOK-TypeSの収納部の下の化粧フタ内部に電池ボックスが用意されている。2系統の電源が必要なのはやや煩雑だが、STAR BOOK-TypeSは単体でも星座早見盤としての利用も可能だ。ちなみに連続動作時間は、新品電池使用時に気温20℃で、約8時間というカタログスペックになっている。

電池ボックス

電池ボックスは、2か所に分かれる。STAR BOOK-TypeSは、単3電池4本用の電池ボックスが背面に用意されている。スカイポッド本体は、単3電池8本用の電池ボックスを化粧フタ内部の電池室に収納する。この電池室は、STAR BOOK-TypeSのケーブルを巻き付けられるようになっている。


スカイポッド本体の構造だが、白い外装の素材は、垂直軸のアリミゾ部分を除き、ほとんどがプラスチックである。ツメで弾いてみると、樹脂製の素材であることがすぐに判断できる音がする。それだけに、架台としての強度にやや不安を感じてしまうが、外装パーツを取りはずしてみると、意外にも内部はかなり頑丈な骨格をしている。

前述のように、内部は片持ちフォーク式に準じた構造で、そのほとんどに金属製のパーツが使用されている。多くの望遠鏡架台は、回転軸が外装部材に支えられる“外骨格”的構造だが、スカイポッドは回転軸を支える主要部分が外装部材に頼らない“内骨格”的構造と言えるだろう。

両軸を支える部材は、厚みのあるアルミダイキャスト製で、水平軸のモーターを備えたベース部分と、そこから立ち上がるフォークアーム部分の2ピース構成だ。フォークアームの取り付け部分は、両面共にフライス加工され、直交の精度にもじゅうぶんな配慮がされていることがうかがえる。

回転軸は両軸共に歯数70枚のウォームホイルでのモーター駆動で、水平軸のホイルギアが三脚側に固定され、垂直軸を支えるアーム部分と共に水平軸のウォームギアが回転するスタイルだ。モーターからウォームホイルまでは、コストダウンのため両軸で多くの共通パーツが使用されている。

内部のメカニズム

プラスチックの外装とアリミゾ部分、電子回路などを取りはずしたスカイポッドの中核部。外観の質感とはまったく正反対で、メカニズムがギュッと詰まった印象だが、ドイツ式赤道儀の極軸を垂直に立てた構造であることがよくわかる。水平軸はホイルギアが三脚側に固定され、モーターユニットが周囲を回り、垂直軸はモーターユニットが固定され、ホイルギアと共に垂直軸が回転する構造だ。また、ウォームギアとホイルギアの当て方に注目したい。ホイルギアは、軸受けの一面にローラーベアリング、もう一面にはデルリンシートが採用されている。さらにウォームギアの軸受けには一端にポールベアリング、もう反対の軸端にはボールポイントが採用されている。

ギア、ベアリング

モーターには、減速ギアヘッドを一体化したエンコーダ付きのDCモーターが採用されている。さらにモーターの出力軸から平ギアを介してウォームギアへと動力が伝えられている。モーターとウォームギアはひとつのユニットにまとめられているが、このユニットはぶら下げるような機構を使って、ウォームギアをホイルギアへ当てている。ユニットは完全に固定はされておらず、ユニットそのものを外側からネジで押すだけでウォームギアをホイルギアに当てるようになっている。この構造では、ギアの歯の中心がそれぞれ正しく当たらない可能性もあるが、写真撮影を考慮した赤道儀の極軸のように追尾精度を要求されないので、実用上は問題ない。

モーターとウォームギア モータードライバー基板

スカイポッド本体に内蔵されているモータードライバー基板は、スフィンクス赤道儀と兼用。そのためDSub9ピンのコネクタも装備する。他社の特許の関係で、モーターごとにCPUを持つ分散制御ではなく、STAR BOOK-TypeSのCPUによる集中制御を行うためのCPLDを搭載する。


また、スカイポッドの回転軸まわりで特筆すべきは、各所にベアリングが使用され、スムースな回転を得ているという点だ。ビクセン製品は、どちらかというとマニア向きというよりもややライトなユーザー層をターゲットとしたものが多く、ベアリングを使用した製品は少ない。スフィンクス赤道儀やGP赤道儀でも、軸受けは樹脂製のシートが使われている。ビクセンのエンジニアによれば、ベアリング多用のねらいは、消費電力の削減にあるという。スカイポッド本体の電源は外部電源の使用も可能だが、基本的には電源ラインを引き回さないように電源を内蔵するシンプルなスタイルである。内蔵された単3アルカリ乾電池8本という限られた電源を効率よく使用するためには、抵抗の極力少ない回転軸が不可欠なのである。DCモーターの場合、トルクが必要になれば、その分電力消費量が増えるからだ。前述したモーターとウォームギアのユニットをぶら下げ式で組み付ける手法も、できるだけスムースな回転を得るための工夫である。

ちなみに、スカイポッドには、粗動のためのクランプ類は装備されていないので、粗動の場合でも両軸共にモーターでの駆動となる。

外観と内部の合成画像

透視図的にスカイポッドの外観と内部を合成してみた。内部には比較的余裕があり、これだけ見るとさらにコンパクトになる気もするが、鏡筒を取り付けた時のバランス感も考慮して、現行デザインになったという。

■スカイポッド仕様一覧
方位・高度微動 ウォームホイル全周微動・歯数70山
各座標表示 STAR BOOK・Type-S 画面に表示、0.1分角表示
自動導入装置 STAR BOOK・Type-S 標準装備
最大導入速度 対恒星時約900倍
電源 単3アルカリ電池8本
動作時間 約8時間(連続使用・20℃・新品アルカリ電池使用時)
外部電源端子 DC12V EIAJ RC5320A Class4
搭載可能重量 約5kg
大きさ 高さ190×幅210×奥行き200mm(脚別)
重さ 2.8kg(脚別)