星の誕生現場にアミノ酸の材料を豊富に検出

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【2014年9月16日 国立天文台野辺山

星の誕生現場である星間分子雲から、生命に必須なアミノ酸が生成される手前の段階の物質「メチルアミン」が豊富に見つかった。いまだ成功例のない、星間分子雲でのアミノ酸検出への期待が高まる。


星間分子雲から惑星へ、生命材料物質の流れ

星間分子雲中の物質が収縮して恒星が生まれ、その周囲に惑星が誕生する。生命発生に関する仮説として、分子雲中に含まれていた生命材料物質の一部が彗星や隕石によって運搬されて惑星に降り積もり、さらに複雑な化学進化を経て最初の生命に至ったという考えが唱えられている。クリックで拡大(提供:R.Ruiterkamp (2001))

大石雅寿さん(国立天文台天文データセンター)らの研究チームは、今まさに星が誕生している現場である2つの星間分子雲を、国立天文台野辺山(長野県)の45m電波望遠鏡で観測した。その結果、メチルアミンという物質が天の川銀河中心部における量の約10倍も存在することをつきとめた。

メチルアミンは、生命に必須なアミノ酸の1つグリシンを生成する前段階の物質だ。星間分子雲においてグリシンが検出された例はないが、メチルアミンの検出で、グリシンが星間分子雲中で生成されることが間接的に示された。

同チームのこれまでの研究結果を総合して、星間分子雲中でのグリシン生成に至る以下のようなプロセスが示唆される。

  1. 青酸(HCN)+水素(H)でメチレンイミン(CH2NH)生成
  2. メチレンイミン+さらに水素でメチルアミン(CH3NH2)生成
  3. メチルアミン+二酸化炭素(CO2)でグリシン(NH2CH2COOH)生成

NASAの探査機「スターダスト」が持ち帰った彗星大気のサンプルにグリシンが含まれていたことから、「星間分子雲中のアミノ酸が、星や惑星が作られると同時に彗星や隕石に取り込まれ、惑星に運搬されて最初の生命の素になる」という宇宙と生命とのつながりの可能性を示すことになる(画像)。

今回検出されたメチルアミンの存在量は、星間分子の存在量を予測した理論モデル(2013年にRobin Garrodさんらが発表)と比較的よく一致していた。このモデルで予測するグリシンの存在量は、チリのアルマ望遠鏡で検出可能な量であることから、星間分子雲でのアミノ酸初検出への期待が高まる。