隕石の中からDNAの構成要素と宇宙由来の有機物を確認!

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【2011年8月22日 NASA

アメリカの研究グループが、DNAを構成する塩基の一部と地球上で天然に作られることのない生命に関連した有機物を、隕石の中から発見した。これまでも隕石の中で様々な有機物が作られてきたと言われていたが、この発見によりその説が間違いないと言えそうだ。


隕石と有機物の化学式イメージ

隕石と有機物の化学式イメージ。クリックで拡大(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith)

隕石のうち、特に炭素に富んでいる炭素質隕石と呼ばれる隕石や、NASAの探査機「スターダスト」が持ち帰った彗星のチリの中には、アミノ酸など生命を構成する基本的な有機物が見つかっている。地球外で生命を構成する有機物が合成されているという話は、以前より研究者の間では議論されていた(注1)。

これまでももちろん、地球の生物による汚染の影響を最小限にすべく慎重に分析が行われてきたが、地球でも見られるようなものが発見される以上、その起源の区別を行うことは難しかった。

NASAゴダード宇宙センターのMichael Callahan氏らによる今回の研究では、7個の南極隕石を含む12個の隕石を分析した。これらの隕石のサンプルをギ酸溶液に溶かし、その成分を液体クロマトグラフという装置や質量分析計を用いて、どのような有機物が含まれているか調べた。その結果、DNAを構成する4つの塩基のうちアデニンとグアニンの2つ、そしてDNAの構成物質ではないが生命活動で重要な役割を果たすヒポキサンチンとキサンチンという有機物を発見した。

さらに、2,6-ジアミノプリンと6,8-ジアミノプリンという有機物も見つかった(注2)。この2つの有機物は地球の生命活動では使われず、天然の生物による合成では作られない(注3)。

また研究グループは、隕石が採集された南極の氷8kgとオーストラリアの砂漠の土壌についても今回と同じ手法で有機物が見つかるかどうかを調べた。その結果、南極の氷からは1000分の1の量のアデニンとグアニン、それからヒポキサンチンとキサンチンが見つかったが、地球では見られない2つのジアミノプリンは見つからなかった。またオーストラリアの砂からも同様な結果が得られた。

さらに2つのジアミノプリンが地球の汚染ではない証拠として、これらは非生物活動によってのみ作られるということが挙げられる。これは隕石の母天体(注4)の中で作られたという説とも合致している。

この3つの証拠から、今回得られた有機物は地球で汚染されたものではないこと、そして宇宙空間の隕石母天体中で有機物の合成が行われていたことがほぼ間違いないと言える。

生命の素となる物質は宇宙で作られ、それが地球に運ばれることによって地球で生命が生まれたという説があるが、今回の結果はその説を支持するような結果とも言えそうだ。

注1:「地球外の物質」 地球外でできたかどうかというのは、酸素や窒素、炭素などの同位体(各元素の中で質量が微少に異なるもの)を見たり、超低温や超低圧など地球では起きえない環境で形成されたものを見つけたりして判断することが多い。

注2:「2,6-ジアミノプリン」 2つのアミノ基(NH2)が付いたプリン類という意味で、前の2,6というのはそのアミノ基が付いている場所を示す。有機物の場合は化学式だけでなく、このような基質がどこに付いているのかというのも起源を探るうえで重要な情報となる。

注3:「天然での2,6-ジアミノプリン」 実際はシアノファージS-2Lというウイルスの中に2,6-ジアミノプリンが発見されたという報告があるが、現時点ではこの1例しか報告されていない。

注4:「隕石の母天体」 隕石は、元々は小惑星ほどのサイズの母天体であったものが宇宙空間で砕かれ地球に落ちてきたものと考えられている。その起源は隕石の分類によって複数あったと考えられているが、あまり詳しいことはわかっていない。