板垣さんがわし座に新星を発見

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【2013年11月8日 VSOLJニュース11月11日更新

山形の板垣公一さんが10月28日、わし座に新星を発見した。


VSOLJニュースより(305)

著者:前原裕之さん(東京大学木曽観測所)

わし座の新星

わし座の新星の発見画像(十字の箇所)。クリックで拡大(撮影:板垣公一さん)

今の時期の晴れた日の夕方、南西の空にひときわ明るく輝く「宵の明星」の金星を目にすることができますが、その金星からさらに視線を天頂の方に移すと、まだ夏の大三角が見えることに気がつくかと思います。夏の大三角を形作る星の1つ、アルタイルを含むわし座に新星が発見されました。

山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんは、10月28.443日(世界時)に口径21cmの望遠鏡とCCDカメラを用いて撮影した画像から13.8等の新天体を発見し、さらに28.457日には口径50cmの望遠鏡を用いてこの天体を確認しました。発見10日前の10月18日に撮影した画像には、この天体の位置には14.3等よりも明るい天体は存在していませんでした。板垣さんの観測によるこの天体の位置は以下の通りです。

  赤経  19時02分33.35秒
  赤緯  +3度15分19.0 秒(2000.0年分点)
  わし座の新星の周辺星図

この天体は茨城県の清田誠一郎さんやイタリアのG. Masiさんらのグループ、フィンランドのA. Oksanenさんがそれぞれ確認観測を行い、ひじょうに赤い色をしている天体であることがわかりました。

また岡山県の藤井貢さんやオーストラリアのT. Bohlsenさん、広島大学のグループと伊パドヴァ天文台のグループが、それぞれこの天体の分光観測を行いました。この天体のスペクトルには、ひじょうに赤い連続光成分に、「P Cyg型プロファイル」と呼ばれる短波長側が吸収線になっているHαや中性酸素の輝線のほか、1階電離した鉄の輝線が見られることがわかりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体は明るさの極大の時期にあたる古典新星で、強い星間赤化を受けていることがわかりました。

この天体は眼視等級に近いV等級では15等ほどと暗いため、眼視的に見ることは困難と思われます。新星爆発によって膨張するガスの速度は秒速1000km程度とそれほど速くはないことから、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。

11月11日編集追記:この天体に、変光星名「わし座V1830」が付けられました。

わし座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。「ツール」メニュー→「データ更新」で新天体データを取得し、「わし座V1830(2013)」を検索・表示してください。

また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」(「コンテンツ」メニューより)では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

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