なゆた望遠鏡がとらえた、2〜3倍に膨れたベテルギウス

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【2013年9月11日 兵庫県立大学

兵庫県立大学西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」による観測で、特定の色で見たオリオン座の1等星ベテルギウスがこれまでの2〜3倍の大きさに膨れているようすがとらえられた。


なゆた望遠鏡の観測装置VTOSで得られたベテルギウスの自己相関像

緑色(左)と赤色(右)の光のみで見たベテルギウス(自己相関像)。緑色で膨らんでいるのがわかる。クリックで拡大(提供:兵庫県立大学、以下同)

VTOSを搭載したなゆた望遠鏡の画像

口径2mの「なゆた望遠鏡」。赤い箱がVTOS。クリックで拡大

北見工業大学と兵庫県立大学西はりま天文台、北海道大学の研究グループの観測で、オリオン座の1等星ベテルギウス(距離643光年)が過去に観測された大きさの2〜3倍に膨れていることがわかった。

ベテルギウスは直径が太陽の1000倍近くあり、太陽の位置にあれば木星の軌道まで入ってしまうほどの巨大な星だ。膨張・収縮によって明るさを変える脈動変光星として知られており、天体としてはひじょうに不安定な状態で、近いうちに超新星爆発を起こすだろうと考えられている()。

2012年11月に行われた観測データを解析したところ、赤、緑、青の波長域のうち、緑色で見たベテルギウスが異常に膨らみ、形状がいびつであることが明らかとなった。膨らんだ直径は1972年〜2010年に可視光線・赤外線で観測された大きさの2〜3倍にも達しており、太陽系でいえば一気に土星の軌道まで膨れたことになる。

なぜ緑色で見た形状だけ大きくいびつなのか、今後その理由を探ることで、ベテルギウスで起こっていることへの理解が進むと期待されている。

今回の観測は、兵庫県立大学西はりま天文台の口径2m「なゆた望遠鏡」に観測装置VTOS(可視ターゲット観測装置)を搭載して行ったものだ。VTOSは可視光で大気ゆらぎの影響を取り除いて天体の詳細な姿を撮影するための装置で、2005年に国立天文台すばる望遠鏡から西はりま天文台なゆた望遠鏡に移設され、これまで改造と機能向上が続けられてきた。なゆた望遠鏡とVTOSを組み合わせることで、可視光域で0.1秒角(100ミリ秒角)以下の角度を見分けられるようになり、今回の発見につながった。

注:「ベテルギウスの超新星爆発」 ベテルギウスが爆発間際の段階にあることは確かだが、ここでいう「近いうち」は、数千年単位も含む。