地球の光から生物の痕跡を発見 宇宙生命探しのカギに

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【2012年3月8日 ヨーロッパ南天天文台

南米チリの超大型望遠鏡(VLT)による観測から、この宇宙に存在する生命の証拠が発見された。といっても、見つかった場所は他でもない、地球だ。地球で生命を探すということは一見妙な話だが、この新しいアプローチが未来の地球外生命探査につながるかもしれない。


「地球照」の観測

三日月と地球照

三日月と地球照。もし地球が未知の惑星ならばという仮定のうえで、地球照を観測する。クリックで拡大(提供:ESO)

「我々は地球照観測という手法を使って、まるで太陽系外惑星であるかのように地球を観測しました。地球を照らした太陽光の一部は、月に向かって反射されます。このとき、月は巨大な鏡のように地球からの光をはね返します。我々が観測したのはこの反射光です」(ESOのMichael Sterzik氏)。

地球照とは、地球が反射した太陽光が月に当たり、月の欠けた部分がぼんやりと見えているものだ(参照:投稿画像ギャラリー 地球照)。

このかすかな地球照は地球の大気の成分を調べるのに利用され、そこから有機体生命の証拠が得られる。この方法では地球が将来の、系外惑星の生命探査の基準となるのだ。

光を分析する新たな手法

生命の存在やその痕跡を探ることはとても難しい。これまでには、系外惑星の大気を通過してきた恒星の光の成分(スペクトル)から大気組成を調べて水の存在を探るなどの研究が行われている。しかし研究チームは、スペクトルではなく偏光度を見るという新しい方法を編み出した。偏光とは、通常はランダム方向となる光の波の振動が、特殊な条件により特定の方向に揃っている状態の光を指す。「分光偏光測定」と呼ばれるこの技術を地球照観測に応用すると、地球の反射光から生物存在の強い痕跡を確認することができた。

「遠く離れた系外惑星からの光は、その主星の光に比べるととても弱いので、解析するのはとても大変です。しかし、主星の光は偏光していないのに対して、惑星からの光は偏光されている、という違いがあります。つまり、分光偏光技術を使えば、まぶしい星の光から惑星の反射光だけを取り出すことができるのです」(北アイルランド・アーマー天文台のStefano Bagnulo氏)。

地球から“見つかった”生命の痕跡

研究チームは、月に反射された地球照を系外惑星からの光だと仮定して、そのスペクトルと偏光度を分析した。そこから、地球の大気には部分的に雲が存在し、表面の一部は海に覆われ、何よりも植物があることを推定するに至ることができた。さらに、異なる場所や時期によって雲の面積や植物の量が変化することも導きだせた。

「地球外生命の探査は次の2つにかかっています。ひとつはそこに生命が存在すること。もうひとつは、それを知る術を持つことです。今回の成果は、それを満たすための重要な一歩です」(カナリア諸島天体物理学研究所のEnric Palle氏)。

「分光偏光観測による発見があるとしたら、光合成を行う原始的な植物の痕跡でしょう。『ワレワレハウチュウジンダ』と語りかけてくるような知的生命体を探すのには向いていないかもしれませんね」(Sterzik氏)。

現在VLTよりもさらに大型の次世代望遠鏡E-ELTが計画されている。このE-ELTが活躍するころには、広大な宇宙の中で地球が唯一の生命の箱舟ではないというニュースが飛び込んでくるかもしれない。