宇宙ヨット「イカロス」、逆スピン運用実験に成功!

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【2011年10月18日 IKAROS(イカロス)専門チャンネル(1)(2)

世界初の太陽帆船「イカロス」は、半年に及ぶ定常運用を昨年12月に終え、現在は後期運用が行われている。推進剤も少なくなり、残された時間で最大限の成果を得るため、10月18日に逆スピン運用実験が行われ、見事に成功した。結果の詳細や今後の運用については解析結果が待たれるが、太陽帆船を運用する上で必要な情報が得られたと期待される。


宇宙空間で撮影された「イカロス」の全景写真

2010年6月19日に宇宙空間で撮影された「イカロス」の全景写真。クリックで拡大(提供:JAXA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は昨日17日、小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」(IKAROS)の逆スピン運用を実施することを発表、今日18日に実験に成功したと発表した。

「イカロス」は2010年5月21日、太陽光圧を薄膜に受けて宇宙を航行する「ソーラーセイル技術」の立証・実験を行う宇宙機として、金星探査機「あかつき」とともに種子島宇宙センターから打ち上げられた。

同年6月9日には宇宙空間で一辺14m、厚さ7.5μmのセイル展開に成功し、世界初の宇宙ヨットとなった。その後も、薄膜太陽電池による発電、太陽光圧による加速、液晶デバイスのON/OFF切り替えによる姿勢制御と次々に「宿題」をこなし、12月8日には金星のそばを通過して、ソーラーセイルによる航行技術の獲得を完了した。現在も太陽周回軌道を航行中で、現在は地球から離れる方向に進んでいる。

定常運用後も後期運用として様々な実験を行っていたが、その中に「膜面挙動・膜面形状の変化を積極的に引き出して展張状態の力学モデルを構築する」というものがある。ソーラーセイルはスピンによって膜を広げているが、このスピンの回転速度や太陽との角度()によってどのように膜がたわむのか、実際に探査機を動かしてみて、そのモデルを構築しようというものである。

既にスピン速度を18分の1まで落とした低スピン運用を実施しているが、このスピンの方向を逆にする「逆スピン運用」を行うと、スピン速度が0のときなどより様々な状況での膜の特性を探ることができ、より良いモデルを構築できると期待される。一時的にでもスピンが0になるのは、これまでと比べて運用上のリスクが大きいが、推進剤の残りが少なくなり、今後データの通信状況が厳しくなることから、このタイミングで実験を行うことが最も価値があり有用な知見、成果が得られると判断されたものだ。

実験の結果、とくに膜がからまるようなこともなく、上手く逆スピン状態になることができた。更なる運用については、逆スピンに移行した時のデータと、今後の探査機の姿勢の予測をするためのデータの取得が必要となる。データの取得には今週末頃までかかる見通しだ。

データの取得と解析結果は、日本が計画している「木星・トロヤ群小惑星探査」など、木星以遠に行く探査技術を磨いていく上で非常に重要な情報となることが期待される。

注:「スピンの回転速度と太陽との角度」 回転速度が上がれば遠心力が働いて膜がピンと張った状態になる。一方で太陽からの太陽光圧によって膜をたわませようという力も働く。このため、回転速度を落とせば膜がたわむと考えられているが、その様子が回転速度と太陽光圧の強さ、角度によってどう変わるのか、ということを実機で実験することが、逆スピン運用の目的である。

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