世界初の宇宙ヨット「イカロス」が後期運用へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年2月2日 JAXA

太陽帆船「イカロス」が、約6か月間の定常運用を終え後期運用に入る。2012年3月末までを目処に、実証したソーラーセイル技術のさらなる検証などを行う予定だ。


(「イカロス」が撮影した金星の画像)

昨年12月8日、「イカロス」が約8万kmまで接近して撮影した金星(右上)。クリックで拡大(提供:JAXA)

(「イカロス」の今後の軌道図)

「イカロス」の今後の軌道概略図。クリックで拡大(提供:JAXA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は先月26日、小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」(IKAROS)の定常運用終了を発表し、これまでの総括と今後の運用計画について報告した。「イカロス」は昨年12月に金星を通過した後、現在も太陽周回軌道を航行中だ。

2010年5月21日、イカロスは太陽光圧を薄膜に受けて宇宙を航行する「ソーラーセイル技術」の立証・実験を行う宇宙機として、金星探査機「あかつき」とともに種子島宇宙センターから打ち上げられた。

同年6月9日には宇宙空間で一辺14m、厚さ7.5μmのセイル展開に成功し、世界初の宇宙ヨットとなった。その後も、薄膜太陽電池による発電、太陽光圧による加速(6か月間の累積光圧加速量は100m/秒)、液晶デバイスのON/OFF切り替えによる姿勢制御と次々に「宿題」をこなし、12月8日には金星のそばを通過して、ソーラーセイルによる航行技術の獲得を完了した(1枚目の画像)。

従来の探査機は、大量の推進剤を積むため搭載する観測機器の重量に大きな制約がある。推進剤を必要としないソーラーセイル技術は、科学者達にとってより多彩な観測を可能にし、技術者達にとってはトラブルを防ぎやすく余裕のある機体設計を可能にするため、宇宙探査を飛躍的に進歩させるはずだ。

JAXAでは、「イカロス」が実証したソーラーセイル技術と、小惑星探査機「はやぶさ」が実証したイオンエンジン技術を併用したハイブリッド推進による木星・トロヤ小惑星群探査を将来的に計画している。

「イカロス」は地球軌道と金星軌道の間のエリアを飛びつづけ(2枚目の画像)、2012年3月までを目処に今後も運用が続けられる。航行データを継続的に解析したり、実験的な動作をさせたりしながら、ソーラーセイル技術についてより深く検証し、今後の開発に活かす予定だ。また、オプション的な観測ミッションであるガンマ線バーストの偏光検出に成功すれば、もう一つ「世界初」の称号が加わる可能性もある。「イカロス君の大航海」から、まだまだ目が離せない。