ボイジャー1号、21年ぶりの向き変更で太陽風を測定

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年3月10日 NASA

1977年に打ち上げられ現在も太陽系の果てを航行中の探査機「ボイジャー1号」が、太陽風を測定するという新たなミッションに挑む。21年ぶりの機体姿勢変更による第1回測定が順調に行われ、今後も定期的に実施される見込みだ。


(太陽圏の果てに向かうボイジャー1号と2号の位置を示したイラスト)

太陽風の影響圏「ヘリオスフィア」の果てを航行中のボイジャー1号と2号の想像図。1号と同年に打ち上げられ別方向に向かっている「ボイジャー2号」の方は、まだ太陽風の速度がゼロになる「行き止まり」に達していないという。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

打ち上げから34年、太陽系脱出に向けて順調に航行中のNASAの探査機「ボイジャー1号」が、21年ぶりに機体の向きを変え、太陽風の方向や速さを測定することに成功した。

ボイジャー1号は機体にぶつかる太陽風のプラズマ粒子を検知することで、現在位置での太陽風の速度を取得しているが、昨年12月にはその速度がゼロ、つまり、太陽から放射状に吹く「太陽風」と太陽系外から吹き込む「恒星間風」とがぶつかる境界に到達していることが発表された。その測定値は今でも安定してゼロのままだという。

ただし、これは太陽系の外側に向かう速度であって、恒星間風とぶつかった太陽風が脇にそれていく流れが存在するはずだ。その向きと速さを把握するために、ジャイロ(回転こま)式の姿勢制御装置を使って機体の向きを変更し、測定を実施することとなった。2月2日の実施テストの後、3月7日に機体を70度傾けて2時間半姿勢を保持し第1回測定を行った。1990年2月に有名な太陽系の「家族写真」を撮影して以来、実に21年ぶりのマヌーバ(軌道や機体の向きを誘導すること)である。174億kmかなたから16時間かけて地球に届いたデータは期待どおり正常なもので、さらに長時間の測定を重ねていけることも確認された。その後1週間にわたって、3時間50分を最長とした数回の姿勢変更と測定が行われている。

「ボイジャーがいまだにこのような貴重な観測データを得ることができる、とても嬉しいことです。これから何十年も他の探査機が到達できない場所なんですから」(ミッションオペレーションマネージャJefferson Hall氏)

ボイジャーチームでは、今後同様の測定を3ヶ月ごとに実施することを計画している。太陽風を測定することにより、太陽系の境界の形や大きさが明らかになっていくことだろう。


ボイジャー1号の位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、ボイジャー1号、2号やパイオニア10号、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。