どうなる、しし群? 流星研究者ボバイヨン氏に聞く(インタビュー前半)

【2009年11月4日 アストロアーツ】

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ジェレミー・ボバイヨン氏へのインタビュー

セミナーに続いて行われたインタビューでは、ボバイヨン氏が流星を研究を始めた動機からたずねてみた。

ボバイヨン氏

− プロの天文学者として活躍されていますが、趣味としての天文に興味はありますか?

私は元々アマチュアとして天文を学びました。星座を覚え、星の色を覚え、小さな望遠鏡をのぞいて……。いつも望遠鏡を買いたいと考えていたのですが、気がつけばパリ天文台に就職していました。そこには1856年製の、研究に使われていない望遠鏡があるので、惑星や月を観測しています。プロとしての仕事には何の関係もない、純粋な楽しみのためにです! ですから答えは間違いなくイエス、アマチュアとしても活動していますよ。

− では、天文が好きになったきっかけは何だったのでしょうか。

高校生のころ、母が小さな星座の本を買ってきました。「そんな役に立たないものを買うなんて」と言っていた私ですが、あるとき本を開くと「星座のことを知るのは無駄かもしれないが、星座は美しい。詩のようなものだ」という解説を目にしました。へぇ、かっこいいな! と感じましたね。それから、父が持っていた惑星科学の分厚い本を読みました。完全には理解できないながらも、読み終えたときに「いつか天文学にかかわる仕事ができれば、とても幸せだろう」と感じたんです。

− ご専門の流星はどうやって観測していますか。

おもな流星群を見ていますが、自動的に記録してくれるビデオカメラを設置してゆっくり観察するのが好きですね。

最初に見た流星群は、2000年のしし座流星群です。次に、韓国で2001年のしし座流星群を見ましたが、実に印象的でした。

でも、その前はと言うと……。まだ私が学生だった1998年、知り合いにアマチュア天文家がいました。彼がある日、こうたずねてきたんです。「おい、しし群は見に行くのかい?」と。

私の反応は何と、「しし群? 何それ」。「知ってるだろ?すごい流星群だぞ?」と言われても、「関係ないね!」と返す始末。

なのに2年後には、大学院でしし座流星群を研究していたわけです(笑)

− その間に何があったのでしょう。

大学で物理学を勉強し続けた最後に、1年間天文学を学んで学位を取ったんです。そして、博士課程では太陽系に関する研究をしたいと考えました。

ちょうどそのころ、フランス国立宇宙研究センターが、しし座流星群による宇宙船への影響(流星ダストの衝突)に関心を示していました。私は同センターからの資金援助を得て、研究を始めました。おかげでしし座流星群を観測することになり、流星群は素晴らしい現象だと気づかされました。1998年と1999年のしし群を見なかったことを本当に後悔しています(笑)

− 流星以外ではどんな分野を研究していますか?

昔も今も彗星を重視して研究しています。あとは小惑星ですね。フランスの研究室で地球接近天体のプロジェクトが進んでいるので、今はおもに小惑星です。

− あなたの研究における最終目標は何でしょうか。

まずは、隕石に付着した有機物が大気圏突入時にどれだけ耐えられるのかを研究して、流星が地球における生命の出現に影響を与えたかどうかが言えるようになれば面白いですね。もう一つは、太陽系の歴史の一番はじめに何が起きていたのかを知ることです。


天文ファンから見ても親近感を覚える研究者と言えるのではないだろうか。一方で、ボバイヨン氏がしし座流星群のことを「何それ」と言い放つほど無関心だったのも意外だ。流星群に興味を持ったのは、まさに出現予測が研究分野として確立された時期に当たる。フランスで博士号を取得したボバイヨン氏は、世界中の流星研究者をたずねて共同研究を続けてきたという。同氏の歩みは、流星群の計算というジャンルそのものの歴史と重なっていた。


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月刊天文雑誌「星ナビ」12月号(11月5日発売)では、「ボバイヨン博士の2009しし群予想」を掲載します。しし座流星群に関する最新情報や同氏のアマチュアとしての活動、さらに日本の読者へのメッセージなどを紹介します。

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