銀河から飛び出す火の玉、すばる望遠鏡が発見

【2008年10月7日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡が、かみのけ座銀河団の銀河RB199を観測し、銀河からまっすぐに飛び出しているような構造を発見した。この構造の正体は、銀河団に高速で落ち込んでいるRB199が銀河団の中心部にある高温のガスと衝突したために、銀河からはぎ取られたガスと考えられている。この構造は星を形成しながら銀河間空間をただよっている。


(銀河RB199と火の玉の画像)

銀河RB199(右端の青く大きな銀河)と、左方向に伸びる「火の玉」。クリックで拡大(提供:すばる望遠鏡、国立天文台、以下同)

(火の玉のスケッチ画像)

「火の玉」のスケッチ。クリックで拡大

(火の玉のかたまり部分の拡大画像)

かたまりの部分の拡大。RB199の反対側(左側)にプラズマ状態のガスが分布していることがわかる。クリックで拡大

国立天文台と東京大学の研究者からなるチームは、すばる望遠鏡を使い、かみのけ座銀河団を観測した。銀河が数千から数万個集まっている銀河団は、銀河の密度が高く、銀河間ガスで満たされ、強い重力場を持つなど極端な環境にあるため、周辺環境が銀河の進化に与える影響を調べるには最適である。

その観測データから偶然に、銀河からまっすぐに飛び出しているような構造が見つかった。この構造は、銀河団中の銀河のひとつであるRB199から約26万光年にわたり伸びている。いくつものかたまりがRB199から飛び出しているように見えることから、研究チームはこの構造を「火の玉(fireballs)」と呼んでいる。

先端部のかたまりは、直径3〜6000光年の星団で、太陽の1000万倍ほどの質量が集まっている。周囲のガスはプラズマ状態になっているが(画像中では赤く写されている)、これは生まれたばかりの恒星からの強力な紫外線によるものと考えられる。つまり、この星団では星の誕生が続いている。

一方、かたまりと銀河をつなぐ青く細い構造も若い星からなるが、こちらには電離ガスが見られないため、星の形成が終わっていると考えられている。

RB199は、銀河団の中心に向かって秒速2000km以上の高速で落下していると考えられる。このような銀河では、周辺の強い重力場でガスや星がはぎとられる現象がしばしば観測されている。しかしRB199が特殊なのは、はぎとられたガスが火の玉のように星を作りながらただよっている点だ。

研究チームは、RB199からガスがはぎ取られた原因を重力ではなく、銀河団を満たす高温ガスとの衝突に求めることで、火の玉現象を説明している。このような現象は、数十億光年離れた遠くの銀河団に数例見つかっているだけだ。すばる望遠鏡による観測で、遠方の銀河団で起こっている現象が、われわれから約3億光年という近い銀河団でも起きていることが初めて示された。