赤外線天文衛星「あかり」、小惑星イトカワを撮影

【2007年8月23日 宇宙科学研究本部 トピックス

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」が着陸した小惑星イトカワを、JAXAの赤外線天文衛星「あかり」がとらえた。今回「あかり」が得た赤外線データを「はやぶさ」による詳しい情報と比べることで、直接探査機を送らない場合でも、小惑星の大きさなどをより高い精度で推定できるようになると期待されている。


「あかり」が撮影したイトカワ

「あかり」が撮影したイトカワ(Itokawa)。世界時間2007年7月26日の午前11時23分から午前11時35分(日本時間午後8時23分から午後8時35分)にかけて波長7マイクロメートルの赤外線で観測し撮影。クリックで拡大(提供:JAXA

「はやぶさ」がイトカワを訪れた目的の1つは、地球に接近する小惑星の性質を調べることだった。しかし、すべての小惑星について、探査機を送るまで情報がわからないのでは意味がない。地上の望遠鏡、あるいは地球を周回する衛星からの観測だけで、できるだけ高い精度で推定できる必要がある。

小惑星の情報でとりわけ重要なのが大きさだ。「はやぶさ」が到達する前に、いくつかの地上望遠鏡がイトカワを観測して大きさを推定したが、その中で実際の大きさに一番近かったのが、中間赤外線による観測だ。今回、「あかり」は近・中間赤外線カメラ(IRC)でイトカワを撮影した。取得したデータの中には、地上まで到達しない波長の赤外線もある。

撮影は7月26日に行われた。イトカワはさそり座の方向4,200万キロメートルの距離(地球から太陽までの距離の0.28倍)にあり、ちょうど地球に最接近しているころだった。明るさは約19等級で、「あかり」はその姿をはっきりととらえている。

一般に小惑星は可視光では暗い。それは、太陽光をあまり反射せず、ほとんどを吸収してしまうからだ。一方、太陽光を吸収することで暖まるため、赤外線では明るく輝く。光を反射する割合や温度分布などといった、小惑星のモデルを作ることができれば、観測から実際の姿を推定できるようになるはずだ。そこに、「はやぶさ」が調べきったイトカワを「あかり」があえて観測する意味がある。