ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、はくちょう座の網状星雲

【2007年8月10日 Hubblesite Newscenter

はくちょう座の網状星雲は、はくちょう座の方向1,500光年の距離にあり、5,000年から10,000年ほど前に起こった超新星爆発の残骸だ。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた網状星雲の画像には、ガスが作る網状の構造が鮮明にとらえられている。


はくちょう座の網状星雲の部分画像

はくちょう座の網状星雲の部分画像(星雲内の異なる狭い領域3箇所をとらえたもの)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration. Acknowledgment: J. Hester (Arizona State University))

夜空に輝く星を見るとき、即座に星の寿命を意識する人は少ないだろうが、当然星にも一生の終わりがおとずれる。なかでも、太陽の8倍以上の質量をもつ大きな星は、一生の最期に超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こし、星全体が吹き飛ばされる。

そのエネルギーは凄まじく、放たれる光も銀河1個分の明るさに相当する。そして、爆発の残骸物質は、時速60万キロメートルという高速で球殻状に広がりながら、周囲のガスに衝突する。さらに衝撃波はガスを数百万度に加熱する。網状の構造の正体は、爆発で飛び散って冷えたガスだ。

高い解像度をもつHSTの画像では、網状の構造がはっきりしている領域とガスが拡散している領域を見分けることができる。前者は、衝撃波面をほぼ真横から見たもので、後者は衝撃波面を正面から見たものだ。

1つの銀河で超新星爆発が起こる割合は100年に数個と、とても低い。しかし、鉄より重いすべての物質は、超新星爆発で作られる。つまり、今われわれが網状星雲として見ている天体も、5,000年から10,000年ほど前に大爆発を起こし、天の川銀河に新しい星や惑星の材料をもらたしたのだ。

そして、人間を含め、今日地球上で見られる物質、太陽系の惑星を形成している物質も、数十億年前に星が起こした大爆発で広がったガスが、天の川銀河の物質と混ざりあってできたものなのである。

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