ハッブル、網状星雲の一部をクローズアップ

【2000年10月13日 ESA Photo Release(2000.10.10)

HSTが撮像した網状星雲の一部

NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)が「はくちょう座」の「網状星雲」の一部をクローズアップ撮影した。網状星雲は視直径約3度にわたって広がる超新星残骸――巨星が超新星爆発と呼ばれる大爆発により寿命を終えた後に残る残骸――であり、細い筋が複雑に入り組んだ構造をしていることから網状星雲と呼ばれる。今回HSTが撮影したのは、背景の地上望遠鏡による全域画像の左上にごく小さく記された四角が示す領域だ。

網状星雲は、毎時60万キロメートル以上の高速で拡散する超新星の残骸物質が恒星間ガスと衝突して輝いている。星雲の最外縁部を撮影したこのHSTによるクローズアップ画像は、残骸物質が恒星間ガスとぶつかっている先端部分のようすをとらえており、薄いシート状に輝いているのがわかる。残骸物質の運動方向は画像上方向である。

今回のHSTによる画像と1953年に地上望遠鏡がとらえた画像を比較した結果、太陽系からの距離がわずか1500光年であることがわかった。これは、これまでの推定よりずっと近い。また、この残骸を生じさせた超新星爆発が発生したのがたった5,000年ほど前であるらしいこともわかった。超新星爆発の当時の推定光度は-8等で、これは細い月ほどの明るさであり、昼間でも見える明るさだ。初期文明を築きつつあった当時の人類を驚かせたことだろう。

HSTの画像は1997年11月、広視野/惑星カメラ2による撮影。水素からの光(波長656.3ナノメートル)をとらえた画像で、露光時間は7400秒。色は疑似カラー。視野角は横150秒角、縦70秒角(1秒角=1/3600度)。

背景の全域画像はオースチン・シュミット望遠鏡の撮影で、視野角は横3度、縦2度。デジタイズド・スカイ・サーベイ(Digitized Sky Survey)計画の一環としてスキャンされたもの。

Credits: ESA & Digitized Sky Survey