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天文雑誌『星ナビ』連載中「新天体発見情報」

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102(2013年9〜10月)

2014年2月5日発売「星ナビ」2014年3月号に掲載

2件の超新星状天体の報告

2013年9月15日、南方海上を動いていた台風18号が接近してきたため、当地は昼から猛烈な雨に見舞われました。その翌日、9月16日には台風18号は豊橋付近に上陸し、三陸沖へと抜けていきました。その後天候は回復し、この日の夕方には快晴となりました。この快晴の空は、しばらくの間続いていました。その晴天にめぐまれた期間に2つの超新星の発見報告がありました。9月17日21時18分に報告された1つは、位置観測者からの初めての報告でした。しかし、香取の野口敏秀氏から自身の撮影していた2011年の捜索画像上の報告位置に、ほぼ同じ明るさの恒星が写っていることが指摘され、近くにある14等級の恒星の見誤りとわかりました。超新星であれば明るい発見でしたが、これは残念でした。

その翌日、9月18日には広島の坪井正紀氏が超新星を発見していたようです。9月20日01時31分に氏から電話があります。氏は「今、発見報告を送りました。よろしくお願いします」と話します。メイル・フォルダーを見ると坪井氏の報告は01時28分に届いていました。そこには「前々夜の観測で新しい超新星らしき天体(PSN)を発見し、今夜確認できましたので報告いたします。既知の超新星はもとより、ノイズ、ゴースト、既知の小惑星、変光星について一応確認したつもりです。ご確認のほどよろしくお願いいたします。報告内容で不備がありましたらご連絡ください」というメイルから始まる発見報告がありました。そして、そこには「2013年9月18日03時47分に25cm f/4.7反射望遠鏡でオリオン座にあるNGC 1762を撮影した2枚の捜索画像上に15.9等の超新星を発見しました。超新星は銀河核から西に27"、南に4"離れた位置に出現しています。今夜、9月20日00時57分に撮影した6枚の画像上に確認しました。光度は16.1等でした。なお、8月29日に行った捜索画像上にはその姿がありません」という報告がありました。

発見報告が遅くなったのは、坪井氏の発見は、いつも2夜目の確認観測を行ってから報告されるためですが、発見は、この時期続いていた快晴の空で行われたもののようでした。氏の発見を報告しようとした02時25分にテレビに「緊急地震速報」が映ります。ちょっとびっくりしましたが、福島の方で震度5強の地震でした。それを見ながら02時26分にダン(グリーン)に氏の報告を送りました。坪井氏からは、02時48分に「夜分にありがとうございました。今回は、出張のため確認が1日遅れてしまいました。前回SN 2013fbの時に報告内容の不備を何件か指摘いただきましたが、今回は何もなかったようでホッとしています」というメイルが届きます。そこで02時52分に『画像を見た限りでは、ずいぶん離れているなぁ……という感じがありますが、離角は27"ですか。発見時刻と発見画像の18時47分48秒の世界時換算が違います』という指摘を送っておきました。すると03時21分に「やはりミスがありました。反省します。時刻はご指摘のとおり0.78319です。また、銀河核からの離角は、再度確認しましたが27"で間違いないようです」という返答がありました。

その日の朝、05時43分に山口の吉本勝己氏から「先ほど、彗星撮影中に坪井さんがTOCP(未確認天体確認ページ)に報告されたPSNを16cm望遠鏡で撮影、確認しました。9月20日04時14分に15.4等でした」という確認報告が届きます。氏の観測をダンに連絡しようとしていた07時45分に吉本氏から再びメイルが届きます。そこには「先ほどTOCPを見ました。この天体は、アストロ・テレグラム(ATEL)No. 5366で、パロマーで発見されたI型のSN iPTF13dgeとして公表されていたのですね。ATELまでは確認していませんでした。今からラブジョイ彗星(2013 R1)とアイソン彗星(2012 S1)のCCD光度を測光します。アイソン彗星は、この新月期には眼視でも見えそうです」という連絡がありました。また、坪井氏からも08時57分に「ATELですでに公表されていたようです。ご迷惑をおかけしました。今後はATELのチェックもしなければなりませんね。どうやったらチェックできるか考えてみます」というメイルが届きます。

すぐ中央局のTOCPを見ると「この超新星は9月4日に発見され、すでにATEL 5379でIa型の超新星と確認されたことが報告されている」という記述がありました。『しょうがないな……』と思いながら、思い直して10時15分にダンにこのことを記載して、吉本氏の観測を送っておきました。そして、坪井氏と吉本氏には10時21分に『まだ超新星符号を与えていません。どうするんでしょうね。吉本氏の観測は送っておきました。ATELは、下のアドレスで以前は購読できました。私にも以前には送られてきていましたが、全号来るわけではないのと、私には「まったく」おもしろくないので断りました』というメイルを送っておきました。

この超新星の観測は、9月21日01時15分に野口氏からも「坪井さん発見のPSNの観測報告をいたします。ATELには出ていたようですが、まだCBETが発行されていないのでフォローアップとして報告いたします。観測時刻は9月21日00時34分、光度は15.7等でした」という報告があります。氏の報告は、念のために01時57分にダンに連絡しておきました。9月22日17時52分になって、山形の板垣公一氏からは「しばらく留守にしてました。私もビショップさんのウェッブ・サイトを頼りにしてたので、ATELはチェックしてませんでした。今回はこれにも載ってなかったようですので、これは大変です。私も今後の課題としますが、これは嫌な問題です。私の発見のとき、1か月も前にATELで発見されていたのに「発見」になったことがありました。変な気持ちでした。アマチュアの立場ではIAUに一本化になるといいですね」というメイルがあります。その坪井氏からは18時07分に「慰めのお言葉、ありがとうございます。私も板垣さんのいわれるロチェスターのサイトとTOCPで確認していました。今後は、ATELをSupernovaeで検索し確認するしかなさそうです。完璧にチェックできるか不安ですが……。昨夜は、京都で開催されたOAA総会に出席してきました。お会いできなくて残念でしたが、岩本さん、菅野さん、嶋さんのお話を聞いて帰りました」という返信が送られていました。TOCPには、その後も国外の観測が報告されましたが、結局、この超新星には超新星符号が与えられませんでした。

超新星 2013fs in NGC 7610

10月6日深夜、00時14分に加古川の菅野松男氏より「こんばんは。いつも情報をありがとうございます。さて本日、星ナビ11月号(2013年)を見ました。新天体発見情報でM65の超新星発見時の貴殿との情報のやり取りを詳しく書いていただき、当日の情景が思い出されうれしくなりました。ありがとうございました。それから、今回の天体発見で発見三冠の達成を広報していただきましたが、その記事のおかげで、明日、10月7日に大阪市内のホテルで、第26回「関西・経営と心の会」から表彰していただけることになりました。天文関係の受賞は初めてとのことだそうで、楽しみにしています」という連絡があります。『菅野さん。良かったですね。今後もがんばってください』。

ところで、菅野氏の授賞式が開かれた10月7日には、台風24号が南方海上から接近していました。今度は九州に向かいそうです。しかし、空はまだよく晴れていました。その夜のことです。22時19分に山形の板垣公一氏から電話があります。「超新星を発見しました。これから送ります」という連絡でした。氏のメイルは22時24分に届きます。そこには「自宅から栃木県高根沢町にある50cm f/6.8反射望遠鏡+CCDを遠隔操作して、2013年10月7日、20時13分にペガスス座にある系外銀河NGC 7610を撮影した捜索画像上に16.5等の超新星を発見しました。発見後1時間の間に同じ望遠鏡で撮られた画像上にこの超新星の出現を確認しました。この間、動きはありません。なお、この超新星は、10月2日に撮影した捜索画像上には、まだ出現していません。超新星は銀河核から東に49"、南に2"離れた位置に出現しています」という発見報告がありました。しかし、発見画像の極限等級が記載されていません。そこで、22時31分に氏に電話を入れ画像の極限等級を聞きました。18.5等とのことです。そして氏の発見は22時42分にダンに報告し、氏にこのことを伝えました。22時51分のことです。

それから約5時間後、10月8日03時56分に上尾の門田健一氏から「発見同夜、10月8日00時01分に25cm f/5.0反射望遠鏡を使用して、その光度を16.3等と観測しました。小さな恒星像が確認できます」という確認報告が早々と届きます。朝まで観測を待ちましたが、この夜は門田氏からの報告のみでした。そこで夜が明けた09時24分になって、氏の観測をダンに送りました。さらに発見1日後の21時23分には、香取の野口敏秀氏からも「23cm望遠鏡で10月8日20時50分に16.5等と観測しました」という報告が届きます。氏のメイルには「今夜の天気分布をみると、晴れているのは千葉県東部と北海道の一部だけのようです。しかし当地も薄雲が広がり、3等星がやっとの空でしたが、その隙間から撮りました」という観測状況が書かれてありました。この氏の観測は、21時48分にダンに送付しました。ところで、この日には台風24号は対馬沖から日本海に入りました。10月7日に栗原の高橋俊幸氏から「10月に入ってからすっきりしない天気が続き、アイソン彗星(2012 S1)に筒を向けることができません。どこまで成長しているか気になるのですが……。近づいてきている台風24号が秋雨前線の雲を吹き飛ばしてくれるのを期待しています」というメイルが届いていました。『高橋さん。台風が、無事秋雨前線を吹き飛ばしてくれたでしょうか。ここでは10月9日04時頃に強風が吹き荒れましたが、大雨にはなりませんでしたよ』。

この超新星は、10月8日にサイディングスプリングにある2.3m望遠鏡でスペクトル確認されました。そして、この超新星の発見は、10月13日10時20分到着のCBET 3671で公表されました。それによると、この星は若い超新星で、IIn型の超新星らしいとのことです。これを見た板垣氏から12時22分に「先日、PSNでは報告をありがとうございました。慎重に記載したつもりでしたが、不備とミスがありすみませんでした。その観測がATELに記載されたのでIAUの超新星符号はつかないのかとも思っていました。でも、SN 2013fsとして公表してくれました。お蔭さまでよかったです。ありがとうございました」というお礼が届きました。氏のメイルは、さらに「ところで『正常なメイルが届かない』というこの前の続きです。実はあのとき、メイルのことでヒタヒタとあぶら汗を流していました。受信メイルの一部が業者の〈有料の迷惑メイル・ブロックサービス〉に引っかかっていたのです。そして、その業者からの「一覧」にはまったく目を通していなかったのです。そのなかには大切な方々からのものや、とても大事なメイルも入っていました。本当にびっくりしながらその対応に追われていたのです。業者のサーバー担当者に聞いてみたら、最近強めに設定したので、その問い合わせ(苦情)が多いと言っていました。今の時代のメイル不着信には、恐ろしさを感じたできごとでした」という状況が書かれてありました。これは、メイル情報で生きている私たちにとって恐ろしいことです。なお、その夜22時00分には、新天体発見情報No. 200を発行し、氏の発見を報道各社に知らせました。

LINEAR彗星(C/2012 X1)の増光

2013年10月20日22時45分に東京の佐藤英貴氏から「LINEAR彗星(2012 X1)の増光」というサブジェクトのついたメイルが届きます。そこには「先ほど、薄明の中、LINEAR彗星を観測したところ、ひじょうに明るくなっていることがわかりました。姿は17P/ホームズ周期彗星や池谷・村上周期彗星(2010 V1)と似たようなバースト直後の姿に見えますが、この彗星は長周期彗星なので、どうなのかな……とも思います。現時点で8.5等なので、仮にバーストでないとすると2014年1〜2月にはおそらく肉眼光度になるかもしれません。今日は、望遠鏡の問題で1枚しか画像が得られなかったので、明日以降、46P/ビルタネン周期彗星の再観測とともにトライしてみます」という報告が書かれてありました。なお、山口の吉本勝己氏による1月11日の眼視観測では、彗星は8.9等とまだ明るく観測されています。

この彗星は、このときから約1年ほど前の2012年12月8日に、LINEARサーベイでしし座を撮影した捜索画像上に発見された19等級の新彗星でした。発見当初、同サーベイからは、彗星は小惑星状天体として報告されました。しかし発見翌日、38cm反射でこの天体を観測したイタリーのブッジは、天体には8"のコマがあることを観測します。同日、佐藤氏もメイヒル近郊にある43cm望遠鏡でこの天体を観測し、12"のコマがあることを認めます。このときの氏の光度は18.8等でした。イタリーのリングストリも同じ望遠鏡を使用して、西北に伸びた20"のコマを観測、さらに12月10日に英国のバートホイッスルの40cm望遠鏡での観測では、天体には恒星状の集光と西北に広がった11"の太い尾があることを観測するなど、この天体は多くの観測者によって彗星状天体としてとらえられ、新彗星であることが判明しました。なお、軌道が安定してからの軌道計算の結果、周期が約2000年ほどの長円軌道を動く長周期彗星でした。

当時、彗星は太陽との合を終え、明け方の東の空に姿を現したばかりで、明け方の東の空、超低空を動いていました。23時14分に届いた佐藤氏の小惑星センターへの観測報告では「彗星には丸い85"のコマが見られた」とのことです。HICQ 2013にあるこの頃の光度予報(H10=8.0等)では14等級でした。そのため、6等級ほど増光し、H10=2.0等ほどまで明るくなったことになります。このとき私は、オフィスを離れ自宅に戻ってきたところでした。そのためOAA/CSのEMESを発行できず、10月21日00時03分に関係者に『東京の佐藤英貴氏より、この彗星が8等級まで増光しているという情報がありました。先ほど、一仕事終えてオフィスから戻ってきたので、EMESを出せません。彗星は明け方の空に観測できます。確認してください。下の光度予報は、増光前の標準等級から計算したものです』という連絡を送りました。その日の明け方05時59分になって、佐藤氏から観測の依頼を受けていた上尾の門田健一氏から「10月21日04時45分に観測しました。彗星のCCD全光度は8.2等、彗星には5'のコマがあります」という観測報告が小惑星センターに送られていました。そして、その日の13時44分到着のCBET 3674で佐藤氏と門田氏の観測とともにこの彗星の増光が公表されました。【次号に続く】

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