メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第45回 夏のイベントラッシュ

星ナビ2008年10月号に掲載)

2008年夏のイベントと、大きな話題となったスーパーメガスターII国内初公開についてお話しします。

スーパーメガスターII国内初公開

この原稿を書いている今、2008年の夏もいよいよ過ぎ去ろうとしている。今夏は特に、イベントが集中した夏だった。6月の日本プラネタリウム協議会(JPA)でのメガスターZEROの実演を皮切りに、10年前のロンドン以来の大きな晴れ舞台でありチャレンジだった国際プラネタリウム協会(IPS)シカゴ大会でのスーパーメガスターIIの初公開。同日に埼玉の坂戸市立坂戸児童センターで実施した七夕ランデブー再上映、それを終えて、恒例となった感のある静岡の浜岡原子力館で、原子力そのものにフォーカスした生解説へのチャレンジ、沖縄トミトン(商業施設)でのセミ・ロングラン公演(土壇場になって会期延長が決定した!)、これもまた恒例となったグランドプリンス高輪でのメガスターI生解説投影、そして極めつけが千葉県立現代産業科学館でのスーパーメガスターIIの初公開である。書いてて疲れるほどであるが、今夏は、短期間に多くのイベントが集中したのが印象的だった。

それにしてもスーパーメガスターIIの初公開は、予想を超える印象的なものとなった。2200万個の恒星数が目玉には違いなかったが、技術的にも性能的にも今までのメガスターの延長であるし、それがどの程度一般大衆に受け入れられるかは、よくわからなかった。しかし、テレビ等の報道の影響も手伝って、連日、整理券待ちの長蛇の列ができ、ダフ屋まで出る異例の盛況となった。そして何より、来場者のほとんどが絶賛してくれたことにさらに驚いた。今までのメガスター、メガスターIIとの違い、差異が、じつに多くの人に伝わったと実感できたのだ。僕はメガスターIの初公開を思い出した。玄人には理解できても、一般の方にはその価値が理解されないのでは、と内心恐れていたメガスターIの初公開のときのことである。在来のプラネタリウムとの違いが多くの人に理解され、新たな潮流として受け止められた当時と今が重なる。

スーパーメガスターIIには、単に美しい星空を投影するだけでない重要な使命がある。それは新たなメガスターシリーズを日本中、いや世界中の人に見てもらえるようにするためのプロトタイプ機としての使命である。それは、短期急造ゆえ、必ずしも細部の事情に目を配れなかったメガスターIIの反省であり、駆動系の精度や強度、保守性や運搬性、部品調達の安定性、環境対応といった一見目立たない地味なところにも細かく改良を加えている。完成度の上がったスーパーメガスターIIは、メガスターシリーズのイメージを担う最高峰のフラッグシップ機としての役目と、その後に続く常設型のモデル機としての2つの顔を持っているのである。

世界で、そして日本で鮮明なデビューを飾ることに成功したスーパーメガスターII、その旅路はまだ始まったばかりである。

大平技研ブース

スーパーメガスターIIは千葉県市川市にある県立現代産業科学館のサイエンスドームに期間限定で設置され、8月17日まで公開された。

スーパーメガスターIIの星空

番組「地上最高の星空」では星座絵が映し出されるなどスーパーメガスターIIの星空とデジタル映像が融合。星座絵は高部哲也氏によるもの。撮影/大川拓也