メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第44回 IPSシカゴ大会での発表

星ナビ2008年9月号に掲載)

世界のプラネタリウム関係者が集ったIPS(国際プラネタリウム協会)で発表したことについてお話しします。

メガスターZEROとスーパーメガスターIIを世界に披露

米国シカゴで6月27日〜7月2日に開催されたIPS(国際プラネタリウム協会)シカゴ大会で、メガスターZEROとスーパーメガスターIIの発表と実演を行った。IPS大会は2年ごとに開催される、世界のプラネタリウム界の関係者が一堂に会する場で、私は、1996年の大阪大会以降、2004年のバレンシア大会を除きほぼ毎回参加してきた。しかしメガスター実機を持ち込んでの実演は1998年のロンドン大会以来、じつに10年ぶりとなった。

ここ数年のプラネタリウム界の潮流はデジタル化に尽きると言ってもいい。IPSや国内の同様の大会を見ても、発表や議論のテーマはデジタル一色で、旧来(とされる)アナログ光学式は関心の対象から離れてしまったかに見える。今回のIPSシカゴ大会でも、当然のごとく、各社の発表内容はほとんど全てがデジタルプラネタリウムに関するものだった。大型機は言うに及ばず、エアドーム用のポータブルプラネタリウムですら、ほとんどがデジタル化されている。

その中に私は、ほとんど唯一といっていい、アナログ光学式であるメガスターを投入したのだ。それも、最新鋭の「スーパーメガスターII」を、である。今回、大平技研として初のベンダー参加であり、しかも欧米数社の中で、唯一日本、いやアジア圏からの最大級スポンサーとしてであった。

参加を決めてから発表に至る一連のエピソードはとてもここで語りきれる内容ではない。けれども、ひとことで言えば発表は大成功だった。会場となったアドラープラネタリウムのドームに出現したスーパーメガスターIIの星空は、デジタル一色のIPSだからこそ、異質で圧倒的な存在感があった。もちろん技術力と、製品の性能の優秀さをPRできたことは言うまでもない。けれどもそれ以上に重要なことは、デジタル化の流れの中で誰もが忘れかけていた本質的な星空の大切さを、世界のプラネタリウム関係者に思い出させることができたかもしれないということだ。それはデジタル化に取り組む私自身も例外ではない。600名余りのプラネタリウム界のキーパーソンたちが地上最高の星空を目の当たりにした今回の出来事は、もしかすると、今後のプラネタリウム界の動向に少なからぬ変化を及ぼすことになるかもしれない。メガスタータイプのプラネタリウムが、今度は海外からも出現し、ますます大きな潮流になっていくのではないか、と想像するのは少し、思い込みが過ぎるだろうか?

大平技研ブース

メガスターZEROの実演を行った大平技研ブース。

スーパーメガスターIIの星空

スーパーメガスターIIの星空。