土星に新たなリングを発見、背景には未知の衛星の可能性も

【2006年10月13日 JPL News Releases (1)(2), IAUC 8759 / 国立天文台 アストロトピックス(248)

NASAESAの土星探査機カッシーニが、土星の新しいリング(環)を相次いで発見した。どのリングも土星の衛星からの放出物で形成されていると見られるが、1つだけ、周囲に衛星が見つかっていないものがある。新しいリングの発見がさらに新しい衛星の発見につながるかもしれないとして、画像の解析が進められている。


(新しいリングの位置を示した画像)

新しいリングの位置を示した画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(新リングの画像 1) (新リングの画像 2)

新しいリング。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

これまで検出できなかったリングをカッシーニが見つけることができたのは、太陽の光に邪魔されることなく「じっくりと」観測できたからだ。今年の9月17日、カッシーニは12時間にもわたり土星の影に入った。これは4年間に及ぶ探査期間中最長である。太陽光が直接入り込まない状態で、その太陽光が照らすリング、そしてリングとリングの間にある間隙を撮影し続けた。

最初に発見されたひじょうに薄いリングR/2006 S1は、土星の中心から約15万1500キロメートルの距離にあり、幅は5000キロメートルほど。A環やB環といった明るいリングよりも外側で、希薄なG環やE環の内側であり、ちょうど衛星ヤヌスやエピメテウスの軌道と一致している。これらの衛星に隕石が衝突することで、はじき飛ばされた物質が土星を回る軌道に乗るかもしれないと予想されていたが、そのように考えていた科学者たちにとっても明瞭なリングが存在することは驚きだったという。

また、その1週間後に発見された2個目のリングR/2006 S2の位置は、2004年にカッシーニが発見した衛星パレネの軌道と重なっている。土星中心から約21万2000キロメートルの距離にあり、幅は約2500キロメートルだ。

さらに、A環とB環の間の有名な「カッシーニの間隙」の中に2つのリングが見つかった。土星の中心から11万9930キロメートル離れた幅約50キロメートルのR/2006 S3と、11万8960キロメートル離れた幅約6キロメートルのR/2006 S4だ。奇妙なことに、25年前にNASAの惑星探査機ボイジャーが撮影した画像には、2つのリングは写っていない。

R/2006 S3とR/2006 S4は、さらなる天体の発見につながるかもしれない。

「『火のないところに煙は立たない』ということわざのように、土星では『衛星のないところに環は存在しない』のです」とNASAエームス研究所のJeff Cuzzi博士は語る。数多く存在する土星の衛星の中でも小さなものは、表面における重力が弱い。そのため隕石が衝突すると、地表の物質はたちまち引きはがされて、衛星の軌道に沿ってリングを形成することになる。また、小天体どうしの衝突や衛星の崩壊もリングを形成する可能性がある。

そこで、2つのリングを形成した衛星をカッシーニの画像から探すことに、多くの科学者が取り組んでいる。その一人、カーネル大学のJoe Burns博士はこう述べる。「私たちは躍起になって、潜んでいるであろう衛星たちの『軌跡』を追っています。新しい衛星の存在とリングとの関連性は、衛星の形成のみならず、土星系全体の形成についても、重要な情報をもたらしてくれるかもしれません。」

土星の環

土星のリング(環)は、ドーナツ状の薄い一枚板のように見えるが、実際は数センチメートルから数メートルほどの細かい氷の粒や岩が数え切れないほど集まってできたもので、厚さは数百メートルほど。氷の粒や岩がまばらにつながって線状のリングを形成していて、これが1000本以上集まって円盤状に見えている。土星でよく知られているリングは7本ある。土星本体から近い順番にDリング、C、B、A、F、G、Eと名前がつけられている。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.70 土星の環はどうやってできた? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])