分離後の「ミネルバ」が「はやぶさ」本機を撮影

【2005年11月16日 宇宙科学研究本部 宇宙ニュース

11月12日に「はやぶさ」本機から分離された探査ロボット「ミネルバ」は、残念ながらイトカワ表面への投下は成功しなかったようだ。現在も詳細な調査が進められるなか、「ミネルバ」が「はやぶさ」本機から分離された後に、振り返ってり返って見た「はやぶさ」の画像が公開された。同時に「ミネルバ」と思われる物体が写っている「はやぶさ」による画像、「ミネルバ」が取得したイトカワの温度データなども公開された。

(「はやぶさ」探査機の太陽電池板のレイアウト) (「はやぶさ」探査機から撮影した「ミネルバ」と思われる物体(黄色円内))

(上)「はやぶさ」探査機の太陽電池板のレイアウト。(赤丸印内が、+Y パネル B-1 の展開ディレイ機構の金具(フック))(下)「はやぶさ」探査機から撮影した「ミネルバ」と思われる物体(黄色円内)。ともにクリックで拡大(提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA))

JAXA宇宙科学研究本部による発表によると、「ミネルバ」が小惑星イトカワの表面に着地できなかった理由について、次のように発表している。「はやぶさ」は重力を補償するため自律的にスラスタ噴射を繰り返しているが、「ミネルバ」の「はやぶさ」本機からの分離時、地上からの指令電波によって行なわれた。そのため、予定された高度よりも、高い高度で分離が行われ、また、上昇速度(ミネルバの初速に影響される)をもった時点で分離が実施されたために、イトカワ表面への投下ができなかったという。

分離後の「ミネルバ」は、回転しながら放出されていく過程で、「はやぶさ」のカラー撮影を行った(画像右上)。同画像には、「はやぶさ」探査機の「パネル B-1 展開ディレイ機構の金具(フック)」と、太陽電池板の裏側の電力計装線が撮影されている。

一方、「はやぶさ」も「ミネルバ」分離212秒後に、広角航法カメラで、「ミネルバ」と思われる物体を捉えている(画像右下)。「ミネルバ」は分離後イトカワからゆっくりと上昇を続けていたと思われるが、「はやぶさ」との通信は、18時間継続して安定に確保され、この間、「ミネルバ」の内部の温度や、電源電圧、探査ロボットの姿勢を示すフォトダイオード(簡易太陽センサ)の出力などを探査機に送信し、「はやぶさ」を経由して地上に送信することに成功している。

得られたデータのうち温度データは分離後もなお上昇していた。これは、イトカワ表面からの熱輻射を受けていたためと考えられ、科学的にも意味のある計測ができた可能性がある。18時間後には、アンテナの指向方向の問題で通信ができなくなった可能性があるが、なお継続してコンタクトが試みられることになっている。また、「はやぶさ」から「ミネルバ」への指令についても、機能の切り替え指令が正常に行われ、それをうけた動作も適切に実施されたことが確認されている。

「ミネルバ」が送信したデータは、以下の通り。

  1. ステータス(ホップ中、静止中などの動作状態)
  2. ハウスキーピングデータ(電気二重層コンデンサの電源電圧、記録したメモリ容量など)
  3. 計測データ(フォトダイオード出力、温度センサ)、
  4. 画像データ

(「ミネルバ」は、カメラを3台、フォトダイオード6個と温度センサ10個(内部4個、外部6個)を搭載している。)

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