土星探査機カッシーニ、タイタンに低温火山発見か

【2005年6月21日 JPL Cassini-Huygens News Release

土星探査機カッシーニによる観測で、タイタンに火山と思われる地形が発見された。NASAの専門家は、メタンの供給源とされる低温火山の存在の有力な証拠が得られたと語っている。

(赤外線画像:左側赤い四角内がホイヘンス着陸地点、右側赤い四角内が発見された低温火山)

(火山と考えられている地形の赤外線画像)

(上)左側赤い四角内がホイヘンス着陸地点、右側小さな赤い四角内が発見された低温火山。(下)火山と考えられている地形(共に赤外線画像)(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

土星最大の衛星タイタンは、太陽系の衛星の中で唯一、地球のように濃い大気を持っている。 その組成は、殆どが窒素だが、2〜3パーセント程度のメタンが存在する。カッシーニの土星探査の目的の一つは、この大気の供給源とそれを維持するメカニズムの解明だ。しかしながら、厚い大気に覆われたタイタンを可視光で観測することは、ひじょうに難しい。そこで、今回カッシーニは、可視・赤外分光観測装置を利用し、赤外線で観測した。

従来は、メタンを豊富に含む炭化水素の海が、タイタンの大気中のメタンを供給していると考えられていた。しかし、カッシーニ、及びタイタンに降り立った探査機ホイヘンスの観測結果によれば、タイタンに大きな海は存在しない。一方、海に代わる供給源の証拠が見つかった。火山と思われる地形である。

赤外線で捉えられた150キロメートル四方の画像には、直径およそ30キロメートルの明るい円形の地形が捉えられている。ここから西に向かって、翼のように伸びる二本の構造が見えるが、これは地球や金星の火山から流れ出た物質(溶岩)が固まった跡にそっくりだ。また、中央に見える暗い部分は火山の中央に典型的に見られるお椀型の地形、すなわちカルデラを思わせる。 火山から吹き出す物質は、主に凍ったメタンと氷と見られる。それらがタイタンの内部にある何らかの熱源によってわき上がり、蒸発しながら地表に吹き出すようだ。

今後45回予定されているカッシーニ探査機のタイタンへのフライバイで、火山を引き起こす熱源の正体に迫る予定だ。土星がタイタンに及ぼす潮汐力で、タイタンの内部が十分に暖められるのだろうか? それとも別のメカニズムが働いているのだろうか? 0.35〜5.1μm(マイクロメートル、1000分の1ミリメートル)に及ぶ352もの波長の光を検出できる、カッシーニの可視・赤外分光観測装置が新たな証拠をつかむかもしれない。


土星の衛星は、木星のガリレオ衛星のように飛びぬけて明るいものはない。しかし、10等前後のものが数多くあり、口径20cmクラスの望遠鏡なら5〜6個の衛星が土星の周りに見えて、ガリレオ衛星以外明るい衛星のない木星系よりにぎやかである。中でも8等のタイタンは土星系最大の衛星(半径約2500km)で、窒素成分の大気を持ち、生命存在の可能性が指摘される興味深い衛星である。(最新デジタル宇宙大百科より)

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