マグネターの隠れた局所磁場を初測定

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【2013年8月22日 ヨーロッパ宇宙機関

強い磁場を持つ「マグネター」のはずなのに弱い磁場しか検出されていなかった天体が、実はひじょうに強い局所磁場を持っていることが、新たな観測手法で判明した。


マグネター「SGR 0418+5729」の模式図

マグネター「SGR 0418+5729」の模式図。クリックで拡大(提供:ESA/ATG medialab)

Andrea Tiengoさん(伊パヴィーア高等研究学院)らの研究で、マグネターと呼ばれる強磁場天体の局所的な磁場構造が初めて測定された。

マグネターとは、重い恒星が重力崩壊して超新星爆発を起こした後に残る中性子星の一種で、ひじょうに強い磁場を持つのが特徴だ。今回観測対象となった6500光年彼方のマグネター「SGR 0418+5729」(以後SGR 0418)は2009年6月に見つかったもので、発見後3年間の観測では、マグネターらしからぬ極めて弱い磁場しか確認されていなかった。

マグネターの磁場の強さは自転速度をもとに計測されるが、この手法では大規模な双極子磁場(天体の両極を結ぶ構造)しかとらえることができない。SGR 0418がマグネターであることを示すX線でのバーストやフレアは確かに見られたため、従来の手法では検出できない磁場が隠れていると考えられていた。

Tiengoさんらはヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線天文衛星「XMMニュートン」を用いて、新手法での観測研究を行った。その新手法とは、わずか9秒という自転周期中に見られるX線の変動を測定するというもので、数百m範囲という局所的でかつ強い磁場の存在をつきとめた。その磁場は1015(1000兆)ガウス以上という、すべての天体の中でも最強クラスのものだった。

マグネターに関しては、強力な内部磁場と細かくねじれた磁力線によってX線爆発が起こっているという理論モデルが立てられており、今回の結果はこの理論に沿ったものとなった。今後は同じ手法を他のマグネターに適用した観測研究が進められるという。