死んでもなお悲鳴をあげる天体の謎に迫る

【2005年6月24日 Spitzer Press Releases

325年前の超新星爆発(編集注)の残骸であるカシオペヤ座 Aで光の「エコー(反響)」が捉えられた。これは、超新星爆発以降、沈黙していたと考えられていたこの残骸が、実は少なくとも50年前に、強力な光を発していた証拠となる。

(カシオペア Aの合成画像(赤:スピッツァーによる赤外線画像、(黄色)ハッブルによる可視光画像、(緑、青)チャンドラによるX線画像))

カシオペア Aの合成画像(赤:スピッツァーによる赤外線画像、(黄色)ハッブルによる可視光画像、(緑、青)チャンドラによるX線画像)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/O. Krause (Steward Observatory))

星が光を発すると、光速で球状に広がる。普通、われわれが見るのは、まっすぐ地球に向かってきた光である。一方、地球とは違う方向に発せられた光も、形を変えて、また少し遅れて、届くことがある。それは、星の周囲の星雲が星の光で暖められることで放射する赤外線だ。これが光の「エコー(反響)」である。

カシオペヤ座 Aからのエコーを捉えたのは、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡。カシオペヤ座 Aは、325年前に大爆発を起こした超新星残骸だ。このエコーは今までで最大のもので、超新星の後長い間活動していなかった残骸から検出されたのも初めてのことだ。エコーの元となった光の放出は、1953年ごろに発生していたと考えられる。もう安らかに眠っていると思われていた星は、実はまだ断末魔の叫びをあげていたのだ。

カシオペヤ座 Aのような超新星残骸は、爆発で吹き飛んだガスの「殻」と、巨星の残骸である中性子星の「核」からなる。中性子星は、非常に活動的なものからおとなしいものまで様々なものがある。爆発から325年が過ぎたカシオペヤ座 Aの中性子星は、まだまだ活発なようであり、もしかすると「マグネター」と呼ばれる天体に分類されるかもしれない。マグネターは、高速で回転し、非常に強力な磁場をもち、ときどき表面でガンマ線の放出を伴う爆発を起こす。そうした爆発の一つが50年前に起き、エコーとして観測されているのかもしれない。


超新星残骸: 超新星の爆発で吹き飛んだガスがつくる残骸。球殻状に広がりながら周囲の星間ガスと衝突し、その衝撃波でガスが加熱されるなどしてX線や電波を発している。かに星雲をはじめとして、はくちょう座の網状星雲、ケプラーの超新星残骸、ティコの超新星残骸などが有名である。(最新デジタル宇宙大百科より)


アストロアーツ編集注:カシオペヤ座 Aの元となった超新星爆発は星間物質に阻まれたとみられはっきりした観測例はない。しかし、1680年にこの位置で暗い星が観測されたという記録があり、参照元のようにこれを超新星爆発とする説もある。なおカシオペヤ座 Aとすぐ近くで1572年に爆発した「ティコの超新星」とは別の天体。