銀河宇宙線の「影」でさぐる太陽磁場

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【2013年7月23日 東京大学宇宙線研究所

銀河宇宙線が太陽にさえぎられてできる「太陽の影」が、太陽の活動周期に応じて変化するようすがとらえられた。新たな手法により太陽近傍の磁場構造の検証を行った、世界で初めての成果となる。


チベット空気シャワーアレイ

標高4300mに設置された「チベット空気シャワーアレイ」。銀河宇宙線が地球大気と衝突してできる粒子を検出する。クリックで拡大(提供:発表資料より。以下同)

銀河宇宙線で見る「太陽の影」の変化

1996年、2000年と2008年にチベット空気シャワーアレイで観測した「太陽の影」。色が濃いほど宇宙線のさえぎられる量が多い。1996年から2006年ごろが太陽活動の1サイクルに相当する。クリックで拡大

東京大学宇宙線研究所を中心とする国際研究グループは、高温・高放射線という過酷な環境のために詳しいことがわかっていなかった太陽〜地球間の磁場構造を、新たな手法によって世界で初めて検証した。

研究チームでは、中国チベット自治区の観測施設で太陽系外からの銀河宇宙線のモニターを行っている。1996年から2009年までのデータをもとに、銀河宇宙線が太陽にさえぎられるようすから太陽磁場構造の変化を探った。

その結果、11年の太陽活動周期に応じて「太陽の影」の大きさが変化していることがわかった。これは、太陽活動の変化とともに磁場構造も変化していることを示唆するものだ。

太陽近傍の磁場構造については、近傍を流れる電流が局所的に影響するか否かで2つの理論モデルがある。今回の「太陽の影」の実験結果と照らし合わせた結果、「電流が磁場構造に反映される」とする理論の方が当てはまった。

今回の研究は、銀河宇宙線中にできる「太陽の影」を利用して太陽近傍の磁場構造を検証した世界で初めての成果だ。今後さらに観測精度を上げることで、太陽の影の「大きさ」のみならず位置や形状の変化からも太陽磁場構造の情報を引き出し、多様な手法で理論モデルを検証できると期待される。

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