太陽そっくりの恒星に太陽のような低温大気層

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【2013年2月22日 ヨーロッパ宇宙機関

欧州の天文衛星「ハーシェル」による赤外線観測で、4光年かなたにある太陽に似た恒星リギルケンタウルスAに低温の層が見つかった。


太陽表面の構造

太陽表面の構造。光球(Photoshere)の外に低温と高温の彩層(Chromosphere)、さらにその外にコロナが広がる。クリックで拡大(提供:ESA)

皆既日食の様子

皆既日食の様子。周囲にコロナが広がり、右下の縁に赤い彩層が見える。画像クリックで投稿画像ページへ(撮影:mareeba1114さん)

太陽からもっとも近い恒星は、3つの恒星からなるリギルケンタウルス(アルファケンタウリ、ケンタウルス座α)連星系だ。3つのうちもっとも近いのは4.24光年の暗い赤色矮星プロキシマケンタウリで、それよりわずかに遠い4.37光年の距離にリギルケンタウルスAとBがある。この2つは、天体望遠鏡で見ると1等星同士の二重星として見える。

リギルケンタウルスBは、そのまわりに地球質量の惑星が発見されて最近ニュースとなった(参照:2012/10/17ニュース「太陽系から一番近い星に系外惑星を発見」)が、リギルケンタウルスAも同じくらい注目に値する。太陽の双子といえるほど質量や温度、組成や年齢が似ており、恒星の他の特徴を比較するのにうってつけの観測対象なのだ。

欧州の赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測と、恒星大気のシミュレーションモデルの研究から、このリギルケンタウルスAに低温の大気層が存在することがわかった。太陽以外でこのような層が見つかったのは初めてのことで、太陽を知るうえでも大きな手がかりとなることが期待される。

太陽の表面(光球面)の外側には「彩層」が、さらにその周りには「コロナ」が広がっている(画像1枚目)。皆既日食のときには、彩層は太陽の縁に紅色の環として見え、コロナは淡く白っぽいプラズマの流れが数百万kmも伸びているようすを見ることができる(画像2枚目)。光球表面の温度は摂氏約6000度だが、コロナははるかに高温の数百万度もある。

さらに不思議なことに、その間の彩層は摂氏4000度と低くなっている。高温コロナの問題だけでなく、この低温層の存在も太陽科学におけるもっとも興味深い点の1つだが、この層がリギルケンタウルスAで見つかったというわけだ。

「恒星の構造に関する研究対象は、これまで太陽に限られてきました。しかし、リギルケンタウルスAに太陽の彩層と同様の低温層が存在する証拠がはっきりと示されました。さまざまな星について、この種の詳細な観測が行われれば、彩層の起源や大気全体の加熱問題を解決するヒントが得られるかもしれません。温度構造の理解は、星の周りに広がる円盤について知ることにつながる可能性もあります」(スウェーデン・オンサラ宇宙観測所のRené Liseauさん)。