もうすぐ太陽圏脱出? ボイジャーの周りで宇宙線が急増

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【2012年6月15日 NASA

35年前に打ち上げられ、太陽圏の果てを目指し続ける探査機「ボイジャー1号」が測定する宇宙線がここ1か月で急増していることがわかった。人工物が初めて太陽圏から脱出する歴史的な日が近づいているようだ。


太陽圏を脱出しつつあるボイジャー1号

太陽圏を脱出しつつあるボイジャー1号のイメージ図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

1977年に打ち上げられ現在は太陽圏の果てを航行しているNASAの探査機「ボイジャー1号」。178億kmの距離から16時間36分かけて届いたそのデータから、探査機の周囲の宇宙線が急激に増えていることがわかった。2009年1月〜2012年1月の間では25%の増加だったが、5月7日以来、1か月に9%というペースで急増しているという。

太陽圏と恒星間空間の境界付近では、太陽風の荷電粒子と、超新星爆発で生成され恒星間空間から飛来する宇宙線とがせめぎ合っている。計測される宇宙線が増加したということは、それだけ「外の世界」に近づいているという証だ。

「越境」の目安として、宇宙線以外に2つの重要な測定項目がある。その1つは太陽からの荷電粒子。現在はまだゆっくりとした減り方だが、境界をまたいだ時に急減すると思われる。

もう1つは、探査機周囲の磁場の向きだ。黄道面に沿って水平の向きであればまだ太陽圏内と言えるが、恒星間空間に入ると垂直の向きになる。磁場の向きに関するデータについては現在解析中とのことだ。

ボイジャー計画当初からプロジェクトに携わるEd Stone氏は、「ボイジャー打ち上げは、世界初の人工衛星(スプートニク1号)から20年後のことだった。当時は恒星間空間に行けたらいいなとは思っていたが、どのくらい長い旅路になるのか、それまで運用ができるのか、誰にもわからなかった」と振り返る。

同じ年に打ち上げられた姉妹機「ボイジャー2号」も健在で、太陽から147億kmの彼方を飛んでいる。初めて恒星間空間に飛び出すのは1号が先であることは確実だが、その日がいつなのか、はっきりするのはそう遠くない未来だろう。


ボイジャー1号2号の位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、ボイジャー1号、2号やパイオニア10号、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。