ボイジャー1号・2号、太陽系の果てからの報告

【2006年6月5日 NASA Features

打ち上げから28年経つが、NASAの探査機ボイジャー1号、2号は今もなお現役だ。太陽から100億キロメートル以上の彼方を飛んでいる2機の探査機からは、太陽系の端についての情報が今も届けられている。


(太陽風と恒星間ガスの衝突の様子の図)

太陽系の最外縁の想像図とボイジャーの位置。クリックで拡大(提供:NASA/Walt Feimer)

1977年に打ち上げられたボイジャー1号と2号は、それから10年間にわたって木星から海王星に至る外惑星の姿を地球に届けてきた。それらの画像の価値は20年以上すぎても色あせることはないが、さらにすごいのは2機の探査機が今なお現役で、文字通り宇宙探査の最前線にいることだろう。

外惑星の歴訪を終えてから、2機の探査機は太陽系の外を目指している。どこまでを太陽系と見なすかにはいろいろな解釈があるが、ここでは太陽風の圧力がその外の恒星間ガスに勝る領域、「ヘリオスフィア(Heliosphere)」を指す(解説参照)。今2機のボイジャーが通っているのは、太陽から放射状に進んでいた太陽風が恒星間ガスの影響を受け始める「末端衝撃波面(Termination Shock)」の付近だ。目指すは、ヘリオスフィアの最果て、「ヘリオポーズ(Heliopause)」である。

地球が太陽の周りを回るように、太陽系も銀河系中心の周りを回っているが、その様子は大海原を公開する船に例えることができるだろう。水を切って進む船の正面に三日月形の波ができるように、太陽の進行方向には「バウ・ショック(Bow Shock=弓形の衝撃波)」が存在し、ヘリオスフィアの形自体、上から見た船そのものだ。

赤道から34度北の方向に向かっているボイジャー1号は、太陽から140億キロメートルほどのところにあり、ちょうど末端衝撃波面を通り過ぎた。一方26度南側に向かっている2号は、太陽から105億キロメートルの位置にあるが、どうやら1号よりも近い場所で末端衝撃波面に到達しそうだ。研究者によれば、恒星間の磁場が、北よりも南の方向で強く作用しているのが原因のようだ。2号の末端衝撃波面通過は来年中と見られ、太陽系の外における磁場の強さをより正確にうかがい知ることが可能になるはずである。

両探査機は、1年に5億キロメートル以上(地球−太陽間距離の3〜4倍)の速さでヘリオポーズを目指している。初めて人工物が地球の外へ出てから50年近く経った今、人類のフロンティアは太陽系をも超えようとしているのだ。

太陽の勢力圏

太陽から吹き出す太陽風は、数十天文単位まで遠ざかると、その力(動圧)がどんどん弱まり、周りの星間空間のひじょうにゆるやかな圧力と拮抗するようになる。この場所をヘリオポーズと呼び、この内側を太陽圏(ヘリオスフィアー)と呼ぶ。さらに、太陽系も全体として星間空間の中を動いているので、太陽圏の形は彗星のように紡錘形をしていると思われる。太陽活動は11年ごとに強弱があるので、ヘリオポーズは一定しているものではない。ただし、いまだにヘリオポーズに到達した探査機はない。(太陽系ビジュアルブック付録CD-ROM「マルチメディア太陽系図鑑 最新版」より)