日本最古の星野写真を発見 113年前の麻布で撮影

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【2012年3月19日 国立天文台

国立天文台の保存資料から、19世紀末から20世紀初めにかけて東京・麻布で撮影された437枚の星野写真乾板が発見された。最も古いものは1899年にまでさかのぼり、日本初の小惑星観測となった乾板や、天体の運動を知るうえでの貴重な資料が含まれている。


ブラッシャー天体写真儀

麻布で観測を行っていた当時のブラッシャー天体写真儀。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

日本最古の乾板

確認できる中で最も古い乾板(1899年3月5日)。クリックで拡大

日本初観測の小惑星

日本初観測の小惑星「NIPPONIA」「TOKIO」をとらえた乾板。クリックで小惑星付近を拡大

今回発見された乾板は、東京都麻布にあった東京天文台(国立天文台の前身。1920年代前半に東京都三鷹に移転)のブラッシャー天体写真儀(画像1枚目)で19世紀末から20世紀初めにかけて撮影されたものだ。歴史的資料として観測装置や文書などの保存・整理を進めている国立天文台アーカイブ室が、約2万枚と想定される古い乾板を整理している際に発見した。当時の資料などは、関東大震災(1923年)や三鷹での天文台本館火災(1945年)で喪失したと思われていた。

乾板の大きさは25cm × 22cmで、視野は12.0度×10.4度。保存状態が悪く、膜面がはがれているものもあったが、かなりの数の乾板は、何が撮影されているかがよくわかる状態で残っていた。

確認できる中で最も古いものは、1899年3月5日に撮影された乾板だ(画像2枚目)。とも座を撮影したもので、露出時間は19時1分から20時8分までの1時間7分で、ほぼ14等級の恒星まで写しこまれている。

また、2夜にわたって7時間以上もの露出をかけて撮影し、17.3等の星まで写っているものも。都心の麻布の空も当時は暗く、また感度の低かった乾板を有効に活用しようとしていた当時の苦労が偲ばれる。

画像3枚目は、日本で初めて小惑星が検出された乾板だ。東京天文台第2代台長だった平山信氏が1900年3月6日と3月9日に撮影し、その後「TOKIO」「NIPPONIA」と命名された(画像3枚目)。

また昔の星野写真は、長年にわたる恒星の動き(固有運動)を知るためにも貴重な資料となる。特に大きな固有運動で知られるはくちょう座61番星を1910年に撮影した乾板も今回見つかり、1855年から2005年まで撮影された他の星図とつなぎあわせることで、150年にわたる移動が見事に再現された。

国立天文台では、これらの乾板のデジタル化・リスト整備を行い、公開を行っていく予定だ。

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