大正時代の太陽の姿、デジタル化でよみがえる

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【2011年11月15日 国立天文台

国立天文台太陽観測所が1917年から1974年にかけて撮影した、カルシウムK線の太陽全面像の写真乾板・フィルムをデジタル化したものが公開された。太陽の長期変動を研究する上でも、この20世紀半ば頃の資料は非常に重要なものだ。


カルシウムK線の太陽全面像

1917年から1938年のカルシウムK線の太陽全面像(擬似カラー)。白く見えているのは、プラージュと呼ばれる周囲よりも高温な領域を示しており、太陽が活発に活動しているのがわかる。クリックで拡大(提供:国立天文台・太陽観測所、以下同)

写真乾板

太陽観測所で保管している、カルシウムK線太陽像が写った写真乾板

観測に使われたシデロスタット

太陽を追跡して鏡で光を観測室へと導くシデロスタット。三鷹キャンパスで稼動していたときの写真(提供:天文情報センターアーカイブ室)

国立天文台は前身の1つである東京天文台の時代から、カルシウムK線の太陽写真をスペクトロヘリオグラフという装置を用いて撮影を行ってきた。東京天文台のあった東京府東京市麻布区(現東京都港区)から、1923年の関東大震災を経て東京府北多摩郡三鷹村(現東京都三鷹市)へと、撮影場所を移動しながらも観測が続けられてきた。

この1917年から1974年(大正6年から昭和49年)のおよそ60年にわたって撮影されてきた、通算8500日分あまりの写真乾板やフィルムの記録がデジタル化され、国立天文台・太陽観測所のウェブページで公開された(下記〈参照〉ページへ)。インドやアメリカでも20世紀初めからのカルシウム画像データが存在しているため、これらを合わせるとおおよそ100年分の太陽活動を追うことができる。

カルシウムK線とは太陽光の紫色の波長域に存在している、カルシウムが太陽に存在することによってできる吸収線(波長は393.3nm)のことだ。カルシウムK線による像は太陽の磁気活動をよく表すことで知られている。

黒点の観測はおよそ400年の歴史があり、太陽活動には長期間の変動があることが知られている。しかし、カルシウムK線で表されるような太陽磁場の観測はまだまだ日が浅いため、このような100年分の太陽活動のデータは、太陽活動やそれが地球へと及ぼす影響を調べる上で非常に重要な資料となると期待される。