星の形成には銀河の磁場が大きな役割?

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【2011年11月21日 マックス・プランク研究所

星や惑星は全て、ガスの雲が重力によって集まって形成されると考えられている。その元となる分子雲の形成には、どうやら銀河の磁場が重要な役割を果たしているようだ。


M33の画像

観測の対象となった渦巻銀河M33。クリックで拡大(提供:Thomas V. Davis)

観測に用いられたSMA

観測に用いられた電波望遠鏡群SMA。クリックで拡大(提供:Nimesh A. Patel, Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)

星は、主に水素でできたガスの雲が重力によって集まっていくことで形成が始まると考えられている。このような水素分子の雲は、渦巻銀河の渦の部分に沿って並んでいる様子が観測できる。しかし、どうやって分子雲ができるのか、何がきっかけとなって周りよりも100倍から1000倍もガスの濃い領域ができるのか、ということはよくわかっていない。

そのきっかけの候補のひとつが銀河の磁場だ。銀河の磁場が宇宙空間の濃いガスに数%ほど含まれるイオンを、さらに濃い分子雲や星となるように導き、それに引きずられて移動してくるほかの分子とともに凝縮しはじめるというものだ。

しかし一方で、分子雲の重力やガス中の乱流がとても激しいために、外部の磁場には影響されないと主張する人もいる。

これを検証するため、独マックス・プランク研究所のHua-bai Li氏とThomas Henning氏は、さんかく座の方向300万光年先にある銀河M33を調べた。

観測に用いたのは、ハワイ・マウナケア山にあるサブミリ波干渉計(SMA)だ。銀河の中でも、磁場の発生源に関連していそうな複数の場所からきた光について、とくに分子雲中に微量に存在している一酸化炭素の偏光について、観測を行った。

偏光を調べると、細かい磁場構造まではわからないにせよ、その磁場が主にランダムな方向に存在するのか、きれいに方向がそろっているのかの区別はできる。M33の中にある大きな6つの分子雲について磁場の方向を調べたところ、全てきれいに銀河の腕に沿った方向を示していた。もしガスの乱流のほうが分子雲に対して大きく影響するのであれば、分子雲に見られる磁場もランダムで無秩序な方向を向くはずだが、この観測結果により銀河の磁場の影響が大きいことがわかった。

今回の発見は分子雲の形成に銀河磁場が大きな役割を果たしている可能性を示している。星の形成や惑星系の誕生のプロセス解明に、また一歩近づいたと言えそうだ。