探査機「ドーン」、小惑星ベスタに到着

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【2011年7月19日 NASA

7月15日、2007年9月に打ち上げられたNASAの探査機「ドーン」が小惑星ベスタの周回軌道に入った。2週間の軌道調整の後、1年間の観測を開始する予定だ。


「ドーン」が軌道投入後初めて撮影したベスタ

周回軌道投入後、1万5000kmの距離から初めて撮影されたベスタ。1ピクセルあたり約1.4km。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)

7月15日午後2時ごろ(日本時間)、NASAの探査機「ドーン」が小惑星ベスタの周回軌道入りに成功し、火星と木星の間にある小惑星帯天体の周回軌道に入った史上初の探査機となった。

現在地球から1億8800万kmのかなたにあるベスタは小惑星帯で2番目に重い天体で、直径は約530km。1807年に4番目の小惑星として発見され観測が行われてきたが、ドーンによる探査で初めて詳細な姿が見られることになる。

ドーン主任研究員のChristopher Russell氏は「ドーンミッションでは、太陽系初期の状態がそのまま残る天体表面の様子を調査することができます。あまり注目されてこなかった領域です。ドーンが送ってきた画像では、ベスタの形成初期のできごとやその後の天体衝突などを示す複雑な地形が見てとれます」と述べている。

地球に落下する隕石の多くはベスタ由来のものと考えられている。8月から本格的に開始する科学観測は、太陽系形成初期に関する知見をもたらし、将来の有人飛行のための足がかりともなるだろう。

4年間で28億kmを旅した「ドーン」は、毎秒につき6.7kmという、イオンエンジンによる最大加速を達成した。イオンエンジンは現在最も高速な探査機推進技術で、日本の小惑星探査機「はやぶさ」でも技術実証が行われている。

主任エンジニアでミッションマネージャのMarc Rayman氏は「地球からベスタまでの航行から周回軌道投入まで、とてもスムーズでした。太陽系の比較的内側で探査が行われていない最後の域を初めて詳細に見られるようになるのですから、わくわくします」と話している。

周回軌道に入った後も、今後2週間かけて軌道の調整が続けられる。その間、ベスタの衛星の有無や物理的特性の調査、航行や観測機器調整のための画像撮影が行われる。探査機にかかる引力からベスタの質量を計算し、そこから正確な軌道投入の時間を割り出す。

ドーンはベスタを1年間観測した後、2つめの観測目標である準惑星ケレスに向かい、2015年2月に到着する予定だ。