マーズエクスプレスによるニリ谷の新画像

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【2011年5月12日 ヨーロッパ宇宙機関

火星探査機「マーズエクスプレス」が、「ニリ谷」の新しい画像を公開した。ニリ谷はイシディス平原の北西にあり、平原の形成と同時期にニリ谷ができたと考えられている。


(マーズエクスプレスによって撮影・復元されたニリ谷の画像1) (マーズエクスプレスによって撮影・復元されたニリ谷の画像2)

マーズエクスプレスによって撮影・復元されたニリ谷。ステレオカメラで撮影・計算の上作成されたもの。クリックで拡大(提供:ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum))以下同

(ニリ谷周辺の様子の画像)

ニリ谷周辺の様子。数字の詳細は本文参照

ニリ谷は火星の地溝と呼べるような地形で、イシディス平原の端に存在している深さが約500mにもなる谷である。平原の端と平行に同じような地溝が複数見られており、地溝の形成はイシディス平原の形成と何らかの関係があると考えられている。

イシディス平原は巨大な天体衝突によって形成された盆地だと考えられている。このときの衝突によって地殻に力がかかり、地盤の沈降が生じたようだ(画像3枚目、1の領域)。また、かなり浸食を受けている直径12kmほどのクレーターがあり、その西側には地すべりの跡も発見できる(2の領域)。

同じ画像から直径3.5kmほどの小さなクレーターも見ることができる(3の領域)。これには放出物の跡が見えず、浸食で消えてしまったか、埋まってしまったと考えられる。左上の黒っぽい領域(4の領域)は画像の左下方向にある大シルチス高原(火山)から来た玄武岩、または火山灰によって黒っぽくなっていると思われる。

このニリ谷は火星のメタンの発生源として注目されている。なぜメタンが発生しているのか、その原因はよくわかっていないが、地形学的あるいはもしかしたら生物学的な原因だと考えられている。2016年に打ち上げ予定の「EXoMars Trace Gas Orbiter」の探査先としてこのニリ谷も挙がっている。