火星探査機MRO、火星に地下水が流れていた証拠を発見

【2007年2月21日 NASA JPL News Releases

NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)が、岩石の特徴から火星に地下水が流れていた証拠を発見した。このような地形をさらに詳しく調べることで、かつて火星の地下に存在した可能性のある微生物などに関する化学的プロセスが明らかにされるかもしれない。


(カンドール谷(Candor Chasma)にとらえられた地層の画像)

カンドール谷(Candor Chasma)にとらえられた地層の画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Univ. of Arizona )

水の存在を裏付ける証拠は、火星のカンドール谷(Candor Chasma)にある露出した地層の特徴から明らかとなった。その特徴は、“鉱化作用”によって形成されたと考えられている。”鉱化作用”とは、地表にある鉱物が液体に溶け込み、その液体が断地層の間から地下へと入り込み、さらに地下にある岩石の割れ目に沿って液体中の鉱物が堆積する作用のことだ。

カンドール谷(Candor Chasma)では、周辺や表面のよりやわらかい物質が先に侵食され、鉱化作用によって鉱物が堆積し硬くなった部分が、数百万年という年月を経て地表に現れたのだ。

発見者のアリゾナ大学の地質学者Chris Okubo氏は、「画像を見て、岩石の割れ目に沿った白っぽい変色に気がつきました。実は私はこれと似たものをユタ州でフィールドワークを行った際に見ていまして、それは黒っぽい砂岩の割れ目の側面に明るい帯状の模様(ハロー)をつくっていました」と話している。

しかしこの発見には、MROに搭載されているHiRISEカメラが能力を発揮した功績も大きい。その分解能は惑星探査史上最高のもので、火星の地表について1メートルサイズのものまで見分けることができるのだ。その鮮明な画像には、カンドール谷(Candor Chasma)のハローが周辺の黒っぽい岩石との対比でわずかながらだが浮かび上がるようにして見えている。

アリゾナ大学でMROHiRISEカメラの主任研究員を務めるAlfred McEwen氏も「今回発見された特徴は、この領域の地下でかつては鉱物を含んだ液体が循環していた証拠です。火星上で岩石がこのような変質を起こしている場所をさらに調べることで、火星の表面下で起きていたかもしれない生命に関わる化学的なプロセスについて、なんらかの情報がもたらされるかもしれません」と指摘している。