ボイジャー1号、太陽風の行き止まり点を通過

【2010年12月16日 NASA

太陽系の果てを航行中の探査機「ボイジャー1号」が、太陽風の速度がゼロとなる境界点を通過した。数年後には太陽圏を飛び出し、恒星間空間に達する見込みだ。


太陽圏の果てに向かうボイジャー1号と2号

太陽系を包む「ヘリオスフィア」の果てを航行中のボイジャー1号2号の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

NASAは13日、太陽圏の外を目指して航行中の探査機「ボイジャー1号」が、太陽風の速度がゼロとなる境界点を通過したと発表した。現在この探査機は太陽から約173億km(太陽〜地球の距離の約116倍)離れたところを飛び続けており、地球からもっとも遠くにある人工物となっている。

太陽系をとりまく「太陽圏」の中では、太陽が放出するプラズマの風「太陽風」が外向きに吹いている。ボイジャー1号が送ってきた現在位置のデータによると、その太陽風の外向きの速度が、太陽圏外から吹き込む「恒星間風」に押されてゼロになっているというのだ。

1977年9月に打ち上げられたボイジャー1号は、1979年に木星、1980年に土星を接近観測してから太陽圏の外に向かって飛行を続け、2004年には「末端衝撃波面」を通過した。末端衝撃波面とは、恒星間風と出会った太陽風の速度がガクンと落ちる境界のことで、その外にある「ヘリオシース」ではさらに太陽風が劣勢となり弱まっていく。

ボイジャー1号の現在位置における太陽風の絶対速度は、ヘリオシースの中を航行する探査機のスピードと、太陽風のプラズマ粒子が機体にぶつかるスピードから推定される。2007年8月に秒速60kmだった太陽風は、ボイジャーが太陽から離れて1年進むごとに20kmずつ遅くなり、今年6月にとうとうゼロになってしまった。その後4か月間の測定でもこの値が安定して変わらないことが確認され、今回の発表となった。おおよその見積もりではあるが、4年後には太陽圏の最果てに到達し、人工物として初の恒星間航行を開始するとみられている。


ボイジャー1号の位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、ボイジャー1号、2号やパイオニア10号、カッシーニなど、主な探査機15機の現在位置と航路を表示することができます。