火星探査機MRO、観測ペースは断トツで史上最速

【2007年2月8日 NASA JPL

NASAの火星探査機、マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)は2006年11月から観測を始めたばかりだが、地球へ送られてきた観測データはCD-ROM 1000枚分に迫っている。今月中には、マーズ・グローバル・サーベイヤーが8年半かけて送ってきたデータ量を抜く見込みだ。観測がおおむね順調に続けられている一方で、いくつかの機器には不具合が見つかっている。


(火星上の、連続する砂丘の画像)

火星の南半球のプロクター(Proctor)クレーターに見られる砂丘。季節は冬で、白い部分は水や二酸化炭素の「雪」だと考えられる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona)

人類が火星に送り込んだ探査機は数多くあるが、地球へ一番多くのデータを届けてきたのはNASAのマーズ・グローバル・サーベイヤーだ。1999年の探査開始以来、送ってきた画像の数は25万枚、CD-ROM 1000枚を超えるデータ量だった。残念ながら、マーズ・グローバル・サーベイヤーは昨年11月に地球との交信が途絶えてしまった。しかし、それと入れ代わるように観測を始めたMROが、先輩探査機が8年半かけて達成した記録を3か月もせずに抜いてしまいそうだ。

MROには火星探査史上最高の性能を持つ望遠鏡HiRISEを筆頭に多くの観測機器が搭載されていて、空前のペースで観測データが蓄積されている。そして、そのデータが史上最高性能を誇る通信システムによって地球に送られている。しかも、火星と地球の距離は12月の最接近に向けて縮んでいるので、データの送信ペースは今後さらに加速しそうだ。

観測は2008年末まで続けられる予定で、そのころにはCD-ROM 5000枚分ものデータが届いている見込みだ。火星探査史上最多どころか、今まで人類が火星探査機から得た全データの10倍をはるかに超える。すべての惑星探査機からのデータを合計しても、MRO1機の方が多いほどだ。

しかしながら、すべてが順調というわけではなさそうだ。高解像度カメラHiRISEには光の検出器が14個あるが、打ち上げ当初からその中の1個でノイズが目立っていた。このノイズが悪化している一方で、昨年11月末には別の検出器でもノイズが発生し、先月には新たに5個の検出器で兆候が現れた。今のところ画質に問題はないが、事態が悪化の一途をたどる事への懸念が広がっている。

また、火星の天気をモニターする別の装置にも、時おり誤動作が発生するようになったため、現在運用を停止して原因の究明が行われている。幸いなことに、残る4つの観測機器は正常に動作しているので、MROから史上最速のペースで送られてくるデータが途切れることはなさそうだ。