パルサーとマグネターを結ぶミッシング・リンクか

【2001年1月26日 国立天文台天文ニュース (411) (2001.01.25)】

パルサーは強い磁場をもち、急速に自転している天体です。磁場の強さは10の8乗テスラと、地球磁場の一兆倍にも達します。磁化の向きと自転軸の向きが異なるため、磁極の方向に放射される電波などが自転にともなって回転し、地球上の観測者はその放射が自分の方向に向いたときだけ、それをパルスとして観測します。このようなパルサーはこれまでに1200個以上発見されています。パルサーは超新星爆発の後に生まれる中性子星と考えられ、半径が10キロメートル程度しかないにもかかわらず、太陽程度の質量をもつという超高密度の天体です。

一方、マグネター(magnetar; 磁石星)とは、通常のパルサーのさらに1000倍にも及ぶ強い磁場をもつ天体で、X線、ガンマ線の観測によりこれまでに何個か発見され、珍しい天体として天文学者の関心を集めています。通常のパルサーより早く自転速度が落ちると考えられています。

コロンビア大学のゴッセルフ (Gotthelf,E.V.) たちのグループは、X線観測衛星RXTE (Rossi X-Ray Timing Explorer) および ASCA (Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysics) による観測によって、「わし座」の一角にあり、ケステバン75と呼ばれる超新星残骸の中にあるパルサーの PSR J1846-0258 が、パルサーとマグネターの中間的な存在であることを発見しました。

超新星残骸自体は1982年頃に発見された、見かけの直径が約3.5分のまだ若いものです。また、このパルサーは磁場の強さが10の9乗テスラの5倍程度と、パルサーとマグネターの中間で、生まれてから僅か1000年程度しか経っていないと推定され、0.32秒の周期で自転をしています。このパルサーは、かに星雲の中に見られるパルサーと同様のメカニズム、つまり自転速度を落とすことで放射のエネルギーを得ていると思われますが、PSR J1846-0258 の自転速度の落ち方を1993年以来の観測から求めたところ、通常のパルサーより一桁大きく、この点はどちらかというとマグネターに似ています。つまりこれは、パルサーとマグネターの性質のそれぞれ一部を合わせもつたような天体なのです。

このように中間的なパルサーが発見されたことから考えると、これまで関係が薄いと考えられていたパルサーとマグネターは実はひと続きの中性子星で、初期の回転速度、磁場強度などの違いによる、その両極端を表わしているだけかもしれません。もちろんこれは単なる可能性であり、早急に結論の出る問題ではないことを忘れてはなりません。

<参照>

  • Gotthelf, E.V. et al., The Astrophys. J. Lett. 542,L37-L40(2000).
  • Cordes, J. Nature 409, p.296-299(2001).