エリダヌス座新星の発見前にオリオン座を撮っていませんか?

【2009年12月10日 アストロアーツ】

11月25日に板垣公一さんが発見したエリダヌス座の新天体は、新星であることがわかったが、さらにその後の調査で、発見時期以前に極大期を迎えていたことが明らかとなった。九州大学の山岡均氏や水島工業高校の大島修氏らは、新星の光度変化の研究に役立てる目的で、発見前の新星が写っている画像を募集している。


(エリダヌス座KTの光度変化グラフ)

エリダヌス座KTの光度変化グラフ。急増光がみられる13〜15日ごろやそれ以前のデータがとくに重要となる。クリックで拡大(提供:前原裕之氏(花山天文台))

11月25日に板垣公一さんが8等級で発見したエリダヌス座の新天体は、新星であることがわかり、変光星として「KT Eri」と命名されました。

さらに、その後のスペクトルの特徴などから、新星の極大期はきっと発見時期よりももっと前にあり、しかも肉眼で見える明るさにまで達していたのではないかと予想され、調査の結果、予想どおり11月14日に5等級まで増光していることがアストロアーツの投稿画像などからわかりました(IAUC(国際天文学連合回報) No.9098)。

新星の増光期は変化が急激なために、光度曲線を描くためのデータが不足します。とくに発見される時期が極大期から遅れた今回のような場合はさらにデータが不足しますので、鑑賞用の画像にたまたま写っていた場合も貴重なデータになります。

今回、新星が出現した位置は、リゲルのほぼ西南西6.5度の場所にあり、被写体として人気のある星座オリオン座を撮影した画像には、写り込んでいる可能性が高いと思われます(新星周辺の星図は「新星エリダヌス座KT周辺の広域星図と詳細星図」をご覧ください)。

そこで、急遽、皆様に広く呼びかけて、発見前の新星が写っている画像をお持ちの方から画像を提供していただいて、この新星の光度変化の研究に役立てようということになりました。

発見前の新星の光度変化の様子は、この他にも欧米の自動観測の画像からも何点か報告されていますが、地球上の夜の時間帯の関係で、日本やアジアでのデータは、その間を埋めるためにもひじょうに重要です。皆様のご協力をお願いいたします。

《エリダヌス座新星の発見前画像の提供について》

■ 募集する画像の撮影期間:
2009年11月10日から16日までの7日間
ただし、撮影者がご自分で測定された等級データがある場合は、この期間に限らず、どの撮影時期でもお受けします。
■ 募集する期間:
2010年1月20日(水)まで。
■ 募集する画像の種類:
正確な明るさの測定に向いている画像ほどありがたいです。つまり、RAW画像があればとても良いですが、JPEG画像も加工前の元画像であればOKです。もちろん冷却CCDカメラによるFITS画像があればベストです。
■ 応募方法:
まず、nova-eri@otobs.orgというメールアドレスに、「エリダヌス座新星の発見前画像がありますので提供します」という趣旨の電子メールをお送りください。折り返し、画像をアップロードする方法を電子メールでご連絡します。
なお、アップロードは「インターネットエクスプローラ」や「Firefox」などの一般的なWebブラウザから簡単に行うことができます。
■ 画像データの取り扱いについて:
提供された画像は、新星の研究とその発表のために使われます。画像は新星の明るさを測定するのに使われます。そのデータは、VSOLJ(日本変光星観測者連盟)へ報告されます。
また、それを元 にVSNET(国際変光星ネットワーク)、CBATIAU(国際天文学連合)国際電報中央局)、IAUC(国際天文学連合回報)等に報告される場合や、日本天文学会年会等の国内研究会で発表する場合があります。その場合は、撮影者の名前を明記いたします。画像そのものを発表の際に使用する場合は、撮影者に相談の上、撮影者名を明示します。上記以外の目的には使用する予定はありません。
■ 注意事項:
  • 【注1】ピントの良くない画像もたいへん役立ちます(ざっと1mよりも短い焦点距離で写したデジタルカメラの画像では、少しピンボケの方が、むしろ測光精度が良くなります)から、鑑賞写真としては失敗作だと思われる画像でも、シャープでないレンズによる画像でも、今回はたいへん貴重なデータになります。
  • 【注2】もとの画像を提供してください。鑑賞写真として見栄えを良くする処理をする前の元画像の方が、信頼できる測定ができます。
  • 【注3】撮影に使ったレンズの焦点距離は問いません。募集する撮影期間で新星が写っているものであれば、広角/標準/望遠/ズームレンズ・望遠鏡などを問いません。
■ 呼びかけ人:
山岡均(九州大学)、大西浩次(長野高専)、前原裕之(花山天文台)、清田誠一郎(VSOLJ)、大島修(水島工業高校)

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