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【特集】カノープスを見よう

(カノープスの写真)

冬の夜空といえば、全天一明るい星・シリウスをはじめとした、にぎやかな星の集まりを思い浮かべます。でももし機会があれば、はるか下の、地平線や水平線あたりに注目してみてください。そこには、全天で2番目に明るい星・カノープスが輝いているからです。

房総半島から撮影されたカノープスの写真。
どこにあるかわかりますか?
マウスを重ねてみてください。

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カノープスとは

カノープスは-0.7等の白い恒星で、その明るさはシリウスの-1.5等についで恒星として全天で2番目です。しかし、あまりに南寄りの空にあるため、北半球の多くの地域(特にヨーロッパ)では見ることさえできません。比較的緯度が低いエジプト、メソポタミア、インドなどでは観察することができたため、結果としてその存在自体は太古から知られていました。

古代中国の政治的中心地となった黄河流域(現代の西安など)では、カノープスは南の地平線すれすれに現れる奇妙な赤い星として知られていました。見えるときもあれば見えないときもあることや、縁起の良い赤い色であることなどから、中国ではカノープスを「南極老人星」や「寿星」と呼んでいます。南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起がよいとされ、とくに、一目見ると寿命がのびるという話が有名です。ちなみに、東京や大阪などの緯度は古代中国の中心地とほぼ同じなので、当時と同じ感覚でカノープスを見ることができるかもしれません。

西洋の星座では、カノープスは「りゅうこつ座」に含まれる星です。りゅうこつ座は、かつては「アルゴ座」と呼ばれる巨大な星座の一部でした。アルゴ号は、ギリシャ神話に登場する船の名前です。アルゴ号の水先案内人の名前がカノープスだったと説明されることがありますが、これは間違いで、別のギリシャ神話で語られるトロイ戦争で活躍した将軍メネラウスがひきいる船団の水先案内人の名前とされています。また、古いエジプト語で「大地(すれすれ にある)黄色(に見える星)」を意味する言葉の変形とする説もあります。

カノープスの見つけ方

残念ながら、カノープスは南天の星なので北限から北ではまったく見ることができません。。天球上のカノープスの赤緯は-52゚42'なので、単純計算すれば北限は北緯37゚18'、福島県いわき市のあたりとなります。ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、実際の位置より浮き上がって見えます。これを「大気差」と呼びますが、大気差も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたりが北限です。標高の高いところから見ることによってさらに北でも見ることができた例があるようです。

東京付近ではカノープスの南中高度はおよそ2度です。地平線(水平線)付近は天頂付近に比べて大気の影響が大きいため、カノープスは全天で2番目の恒星とは思えないほど暗く、夕日と同じように赤く見えます。南中するのはオリオン座のベテルギウスより後で、おおいぬ座のシリウスよりも先です。東京での南中時刻は1月20日が22時05分、2月1日は21時18分、2月10日は20時42分、2月20日は20時03分、3月1日は19時28分で、西ではこれより遅くなります(大阪で約20分、福岡で約40分)。見やすい時間は、南中の前後約30分です。見る場所は、南の地平線もしくは水平線が見渡せることが絶対条件です。高いところから見下ろすのも手ですが、高層ビルから見る場合は光害に邪魔されて難しいでしょう。

東京 2月10日 午後9時ごろの星空

この画像はステラナビゲータを使って作成しました。クリックで拡大します

おおざっぱな探し方としては、右図のようにベテルギウスとシリウスの真ん中から南にたどっていくというものがありますが、おおいぬ座の足の星、β星とζ星を結んで南に伸ばすと、より確実です。肉眼で見るのが難しくても、双眼鏡があるとよいでしょう。また、星座早見盤を用意すれば星をたどりやすくなります。

モバイルアプリで探す

iステラの天体情報でカノープスを調べる

天体ナビゲーションアプリを使えば、カノープスを見るのはぐっと簡単になります。iPhoneアプリ「iステラ」はiPhone搭載のGPSを使って、現在の場所で見える星空を正確に再現することができるので、カノープスが地平線上に現れるか、またどのタイミングで見れば良いのかが一目瞭然です。

iステラでカノープスを導入

「iステラ」は電子コンパスと連動して端末を向けた方向の星を表示できるほか、見たい天体を探すこともできます。検索画面でカノープスを選び、矢印にしたがって端末を動かせばカノープスが見える方向にたどりつきます。

Androidをお持ちの方は「スマートステラ」、iPadをお持ちの方は「iステラ HD」、Windows 8をお持ちの方は「M+Stellar」がそれぞれおすすめです。

関連リンク

ステラナビゲータ9
でカノープスの見え方を再現する

カノープスを見るためには、あらかじめいつ、どの位置に見えるかを正確に知っておかなければいけません。そんなときには、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」が便利です。時刻や緯度による違いはもちろん、大気差の影響や、周囲の地形も考慮した正確な再現が可能です。

場所の設定

[設定]メニューの[場所]

自宅の周囲やよく行く観測地でカノープスが見えるかどうか確認してみましょう。大ざっぱな目安を知りたいのであれば、[設定]メニューの[場所]をクリックすると開く[場所]ダイアログで、下部の[都市名選択]ボタンをクリックして観測する市町村を選択してください。

[場所]ダイアログ

正確なシミュレーション(特に地形を再現したい場合)を行うには、あらかじめ観測地の経度と緯度をGoogleマップなどで確認して、[場所]ダイアログの右側に入力します。「スーパーマップルデジタル」のようにステラナビゲータと連携できる地図ソフトを使うと、設定はとても簡単です。またステラナビゲータで動作する GPS 受信機があれば、USB などでパソコンと接続した状態で[設定]メニューの[GPS]を選択して、[GPS]ダイアログから現在地の経度と緯度を取得することができます。

地形を表示

リボンバーから開く

[天体]メニューから[地形・地上風景]を選択するか、またはリボンバーの[昼光・風景]から[地上風景]の[詳細]を選択して、[地形・地上風景]ダイアログを開きます。

[地形・地上風景]ダイアログ

[地形を表示]にチェックを入れて[OK]をクリックすると、地平線が立体的に描画されます。また、[解像度:] のスライダを [詳細] 側へ動かすことで、地平線の凹凸をより詳細に描画することができます。

初期状態では [ビットマップで表示:] がオンになっていますが、これをオフにしていただくとより精密な地形メッシュで描画されます。ただしこの場合には動作の負荷が非常に大きくなりますのでご注意ください。なお、地形データを HDD にインストールしていない場合には上記の操作を行っても地形は描画されません。この場合には、マニュアルの説明に従って地形データを追加インストールしてください。

昼間の地形表示

時刻を昼間にすると、描画された地形がよく見えます。

カノープスと山の線

この例ではカノープスが山の上すれすれに昇っていることがわかります。ただし、ここで再現できるのはあくまで地形だけなので、山の上の樹木や地上の建物によってカノープスが隠されてしまう可能性がある点にご注意ください。

大気差補正をなくしてみる

[表示形式]ダイアログ 大気差補正の有無

[設定]メニューから[表示形式]を選んで開く[表示形式]ダイアログでは、大気差補正の有無を設定できます。初期状態ではオンになっているので、チェックを外してカノープスの高さの違いを確認してみましょう。

オーストラリアから見たカノープス

[場所]ダイアログでオーストラリアを選択 オーストラリアの星空

南半球では、カノープスはどのように見えているのでしょうか。再び[場所]ダイアログを開いて、世界地図からオーストラリアをクリックしてみましょう。すぐに観測地が変更され、見慣れない星空が画面に広がります。

恒星名の表示

リボンバーの[恒星]タブで[名称等]の[固有名]をクリックすると、星の名前が表示されます。カノープスはほぼ天頂近くまで移動してしまいました。

高いカノープス

星図中のカノープスをクリックすれば、[天体情報]ダイアログの中で高度を確認できます。