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星ナビ機材セレクション

「ケンコー スカイエクスプローラー SE300D」

※注意:「スカイエクスプローラー」シリーズは「NEWスカイエクスプローラー」シリーズに改められ、価格が変更になりました。

星ナビ 2008年9月号

レポート/川村 晶+星ナビ編集部

2008年10月20日

後部座席に入る大口径

SE300Dの像は、口径30cm、F5の短焦点ニュートン反射の像である。付属のPL10mmやPL26mmを使って観望を行ったが、中心像はさすがにシャープで、内外像を見てもじゅうぶんに実用的な鏡面であることがわかる。セルによる鏡面の圧迫なども感じられない。ドブソニアンとして星雲星団の眼視観望用途では、問題ない精度といえるだろう。また、シースルー型の主鏡セルのおかげか、外気温になじむのも早いと感じられた。

さて、SE300Dを星空の元に持ち出し、実際に星雲星団を観望をしてみた。これだけの口径があると、やはり系外銀河や球状星団を楽しみたい。残念ながら時期的に系外銀河の密集したエリアがすでに西に傾いてしまったので、夏から秋の空のメシエナンバーの付いた球状星団を立て続けに導入してみた。さすがに口径30cmもあるとM13やM22など、大型のものは周辺の微光星がきれいに分離し、星が密集した中心部にも微光星が光っているようすがよくわかる。連続していくつもの球状星団を眺めてみると、それぞれの大きさや形、さらに密集度の違いなどもわかり、小さな口径では味わえない楽しさを体験できる。

また、M27やM57も眺めてみた。小口径では光のシミのような惑星状天体だが、大口径で倍率を上げてみると、星雲内部の構造がそれなりに見えてくる。夏の銀河に埋もれるような散開星団もいくつか眺めてみたが、微光星の色の違いが明瞭にわかる。

ちなみに、付属のアイピースは2本とも見かけ視界の狭いプローセルタイプなので、より観望を楽しみたいなら良質な広角タイプのアイピースを入手したい。

ところで、気になるのは移動収納形態から観望形態へ鏡筒を伸ばした時の光軸の再現性だろう。メーカーから製品として供給されている以上、極端に再現性が悪いとは思ってはいなかったが、移動して組み上げるごとに市販の光軸調整用レーザーで確認したところ、光軸が大きくずれているようなことはなかった。暗い星空の元に出かけてディープスカイを楽しむという一般的なドブソニアンの使い方なら、実用じゅうぶんな再現性を有しているといえる。とはいえ、ドブソニアンユーザーなら、光軸調整のテクニックはしっかりと体得しておくべきである。光軸調整アイピースや光軸調整用レーザーなどは、ぜひともそろえておきたいアイテムだ。

今回、観望に出かけるために乗用車(トヨタ・プリウス)を用意したが、意外にあっさりと鏡筒はもちろん、架台部までを後部座席に収めることができてしまった。日本国内では、ドブソニアンでの観望のために車での移動を強いられる人が大半だろう。こうした現状では、このクラスの鏡筒が乗用車に楽に乗せられるメリットは大きい。加えて観望場所での面倒な組み立て作業の手間も、分割式の鏡筒と比較して格段に軽減されるのもうれしい点だ。さらに、収納スペースの少ない住宅事情も考えれば、SE300Dはまさに日本向けのドブソニアンと思えてくる。

SE300Dをプリウスの後部座席に置いたところ

トヨタ・プリウスの後部座席にSE300Dを置いてみた。架台部へ鏡筒をわずかにもぐり込ませると、一式を載せることが可能だった。もちろん、このまま走行するのは危険。運転席や助手席との間に、防寒服を詰めた袋などをクッション材として置き、荷崩れしないようにしたい。

SE300Dの寸法、およびパイプの伸縮機構

パイプの位置決め機構は、金属球をパイプの横穴に押し込むようになっている。ハンドル付きのネジはロック用で、先端に樹脂が被さっている。炎天下では素材が膨張するためか、伸縮機構の動きがかなり渋くなってしまったのが気になった。

Kenko Sky Explorer SE300D 主な仕様
光学系型式 ニュートン反射式
主鏡有効径 305mm
焦点距離 1,500mm
極限等級 14.16等
集光力 1,898倍
分解能 0.38秒
接眼部 クレイフォード式(2インチ、31.7mm径対応)
ファインダー 9倍50mm
架台 フリーストップドブソニアン式
付属品 アイピース PL10mm・PL25mm
重量 約37kg(鏡筒20kg+架台17kg)
標準価格 168,000円(実販価格12万円台半ば)
問い合わせ 株式会社ケンコー 光機営業部
TEL 03-5982-2161