100億年前の銀河、星形成率は今の20倍

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2013年12月6日 すばる望遠鏡

名古屋大学などの国際研究チームがすばる望遠鏡を用いて、100億年前の銀河で新しい星々が活発に形成されているようすをとらえた。星形成率や重元素の量の測定から、初期宇宙の銀河の変遷の一端が明らかになっている。


銀河のスペクトルと輝線

個々の銀河のスペクトルを横方向に並べたイメージ。青丸は原子の存在を示す輝線の部分。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

銀河の星形成率の分布図

銀河の星形成率の分布図。時代をさかのぼるほど、また銀河の質量が重いほど大きくなることが示されている。クリックで拡大

柏野大地さん(名古屋大学)ら東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構、名古屋大学、国立天文台などの国際研究チームが、すばる望遠鏡とその搭載装置FMOS(ファイバー多天体分光器)を用いて、100億年前の銀河で新しい星々が活発に形成されているようすをとらえた。

FMOSでは、400本ものファイバーをそれぞれ1つの天体に正確に向けることで、同時に400個の天体の光を分析することができる。銀河からの光を波長ごとに分けて調べると、銀河までの距離やダスト(塵)の量などがわかり、そこから銀河内での星形成率 (1年間に新しく作られる星の総質量)を求めることができる。今回の発表は、この「FMOS-COSMOSサーベイプロジェクト」の初期成果となるものだ。

観測の結果、100億年前の宇宙において銀河が重いほどその中での星形成率は高く、また当時の銀河では現在の20倍以上もの効率で星が生み出されていたことがわかった。これまで天の川銀河の近傍、つまり現代に近い時代の宇宙でしか確かめられていなかったことが、100億年前までさかのぼってもなお当てはまることが示されたことになる。

さらにこれらの銀河の星間ガスには、重元素(水素とヘリウム以外の重い元素)がほんの少ししか含まれていないこともわかった。このころの銀河は水素やヘリウムのような原初のガスを大量に蓄え、それが恒星の核融合反応で重元素に合成されて銀河が成長するという初期宇宙の銀河像に一致する結果だ。

一方で、観測された中でもかなり重い銀河は、大量のダストと重元素を蓄えていた。この結果から、こうした重い銀河はすでに十分に成長しており、完全に成熟し星形成を終えてしまった現代の銀河に似ていることが示される。

FMOS-COSMOSサーベイは、他の望遠鏡での観測と共同で1000個を超える銀河を観測して宇宙の大規模構造の地図を作ることを目標としている。今の宇宙に見られる成熟した重い銀河団のような銀河の集まりが宇宙の初期にもあったのか、その答えを見つけることが期待される。

〈参照〉

〈関連リンク〉

〈関連ニュース〉