X線と電波でモード切り替え 中性子星放射を観測

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【2013年1月29日 マンチェスター大学

X線と電波の両方を放射し、しかもその強度がまるでスイッチを切り替えるように変化するパルサーが観測された。


中性子星パルサー

中性子星パルサーの想像図。クリックで拡大(提供:ESA/ATG medialab)

パルサーは強い磁場を持った中性子星で、高速で回転する直径20kmほどの天体だ。磁極からビームを放射しており、パルサーが自転するたびに短いフラッシュのように点滅するのが観測される。

X線や電波など広い範囲にわたる波長の電磁波を放射するパルサーも見つかっているが、パルサー発見から45年経った今でも、その発光メカニズムについてはっきりとはわかっていない。

電波を放射するいくつかのパルサーは、2つ以上の状態の間で、パルスのパターンと強度が切り替わる。切り替えの瞬間は突然やってくるため、予測は不可能だ。また、微弱なX線放射も検出されている電波パルサーも少数あるが、その変化については詳しく観測されていなかった。

微弱なX線をとらえるため、英ジョドレルバンク天文台の研究者を中心とする国際チームは、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線天文衛星「XMMニュートン」でしし座方向にあるパルサー「PSR B0943+10」を観測した。また、オランダとインドにある地上望遠鏡で、パルサーが放射する電波の変化も同時に追った。

その結果、電波の変化と同時にX線も変化していることが明らかになった。電波が2分の1になると、X線は2倍明るくなる、という具合に明るさが変わる。また、強いX線の特徴は電波が強い時(つまりX線は弱い時)のものとはまったく異なっている。

「X線が強くなるだけではなく、その放射がパルス状の点滅を見せることもわかりました。これは電波が明るいときには見られません。まったく予想外の結果です。わたしは、このパルサーの変化をカメレオンになぞらえました。動物のように、このパルサーが温度などの環境変化に対応して変化するわけです」(英マンチェスター大学のBen Stappers博士)。

「パルサーの磁極付近に一時的な“ホットスポット”が現れ、状態の変化に伴ってスイッチのオンオフを切り替えている、と考えられます。しかし、なぜこのように劇的で予測不可能な変化がパルサーに起こるのかは、まったくわかりません」(英サセックス大学のGeoff Wrightさん)。

「PSR B0943+10は、X線を放出することが知られている一握りのパルサーのうちの1つです。X線という高エネルギー放射が電波の変化につれてどうふるまうのかを知ることによって、パルサーの放射プロセスについて新しい知見が得られるかもしれません」(Stappers博士)。

今年中に、別のパルサーについても同様の観測が行われる予定となっている。