初めてとらえられた?中性子星の回転ぶれ

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【2013年1月11日 NASA

1秒に11回転する中性子星から荷電粒子の超高速ジェットが噴き出す様子が8コマの動画でとらえられた。その動きから、この天体が歳差運動(回転軸のぶれ)している可能性が指摘されており、中性子星をさらに理解するための新たなヒントとなるかもしれない。


ほ座パルサー

直径約19kmのほ座パルサーから噴き出すジェットの長さは0.7光年にも及ぶ。クリックで拡大。リリース元では8コマの動画を見ることができる(提供:X-ray: NASA/CXC/Univ of Toronto/M.Durant et al; Optical: DSS/Davide De Martin)

画像は、ほ座()の方向約1000光年かなたにある中性子星パルサーから噴き出すジェットの姿だ(リリース元で動画を見ることができる)。中性子星は太陽の約8〜30倍の質量の恒星が重力崩壊して爆発した後に残る超高密度天体で、高速自転にともなって放射が点滅(パルス)しているように見えるものは「パルサー天体」と呼ばれる。

ほ座パルサーは89ミリ秒周期(1秒で11回転以上)で自転しており、その自転軸方向に噴き出す荷電粒子のジェットは光速の0.7倍という猛スピードだ。2003年にもこのジェットが短時間の動画でとらえられたことがあったが、2007年に行われた同データの研究から、この天体が歳差運動をしている可能性が指摘されていた。

歳差運動とは天体の自転軸のぶれのことだ。地球も歳差運動をしており、今は北極星(こぐま座のポラリス)を指す地球の自転軸も、長い年月のうちに別の星を指すようになる(参照:天文の基礎知識「歳差運動」)。

カナダ・トロント大学のMartin Durantさんらは2010年6月〜9月の再観測から、ほ座パルサーが120日周期で歳差運動しており、それによってジェットがらせんを描いているのではと見ている。

歳差運動の原因として考えられるのは、中性子星が完全な球体ではなくほんのわずかにゆがんでいることだ。高速回転による内部の超流動体と外殻の相互作用で一時的な加速自転が起こることがあり(「グリッチ」と呼ばれる)、それがゆがみを生んでいるのかもしれない。

また、歳差で生じたジェットのわずかなカーブが周囲の強力な磁場によって増幅されている可能性もあるという。研究チームのGeorge Pavlovさん(ペンシルバニア州立大学)は、これを「固定していない消火ホースに高圧で水を通した時に、ちょっと当たっただけでホースが暴れ出すようなもの」と喩えている。

もしこの歳差運動が正式に確認されれば、中性子星としては初めての発見となり、高エネルギー現象によって生じるとされる重力波の探索対象としても役立つかも知れないという。

注:「ほ座」 船の帆に見立てた星座。日本では冬から初春にかけて南の空にわずかに顔を出すが、南の地方を除いてあまり見やすくない。