宇宙のハンマー投げで飛ばされた星

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【2012年12月27日 NASA

NASAの天文衛星「スピッツァー」が、宇宙空間を秒速24kmで突き進む恒星とその進行方向に広がる繊細な構造の姿を鮮やかにとらえた。この星は、かつてパートナーだった別の星の爆発の際に振り飛ばされたと考えられている。


へびつかい座ζ星とバウショック

へびつかい座ζ星(中央の青い星)とその付近に作られる塵のバウショック(赤)。3波長の赤外線で観測しそれぞれに別の色を割り当てた擬似色画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA)

へびつかい座ζ星の位置

へびつかい座ζ星の位置(緑の十字)。2.5等級で日本からは夏に見やすい。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」が、宇宙空間の塵の中を秒速24kmで進むへびつかい座ζ(ゼータ)星をとらえた。恒星から吹き出す激しい恒星風が周囲のガスや塵とぶつかってアーチ状の衝撃波(バウショック)を生み出し、星の進行方向の前面に広がる繊細な糸のような構造として見えている。

へびつかい座ζ星は約370光年かなたにある巨星で、質量は太陽の20倍、明るさは8万倍もある。かつてはさらに重い星と連星を成していたが、その星が爆発して最期を迎えた時、ハンマー投げで手を離したときのように振り飛ばされたと推測されている。

以前、赤外線天文衛星「WISE」が全天サーベイを行って同じ対象を撮影しているが、より狭い範囲を観測するスピッツァーは今回、さらに鮮明な像を見せてくれている。