ハッブルが見た星団の激突

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【2012年8月28日 HubbleSite

約17万光年かなたにある大質量星の集団2つが合体しつつある様子を、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた。天の川銀河の伴銀河、大マゼラン雲にある活発な星生成領域「かじき座30」(タランチュラ星雲)の中での出来事だ。


合体しつつある2つの星団

合体しつつあると見られる2つの星団(印の箇所)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and E. Sabbi (ESA/STScI) Acknowledgment: R. O'Connell (University of Virginia) and the Wide Field Camera 3 Science Oversight Committee)

当初、これらの星団はかじき座30の中心にある単一の星団と考えられていたが、実際には100万年ほど年齢が違う2つの星団が合体しつつあるところのようだ。かじき座30では、2500万年前から活発に星が生まれ続けている。

この領域で故郷の星団から弾き飛ばされた「暴走星」(runaway star:「走り去る星」とも呼ばれる)を探索していたElena Sabbiさん(宇宙望遠鏡科学研究所)らは、比較的軽い星の分布が、合体しつつある銀河の形と同じように引き伸ばされていることに気がついた。この形状と、2つの星団の年齢が異なるという観測データから、星団が合体しつつあるということが示された。

いくつかの理論モデルによれば、星団を生み出す巨大ガス雲は小分けにされ、それぞれで星が作られると集団同士で相互作用を及ぼし、合体してさらに大規模な構造となる可能性がある。この相互作用が、今回かじき座30で観測されていると考えられている。

また、かじき座30の周囲には、力学的相互作用で中心から弾き飛ばされたと考えられる非常に多数の暴走星がある。重い星が軽い星との相互作用で星団の中心部に落ち込む「コア崩壊」が起こると、コア(中心部)が不安定になり、重い星がお互いを星団から弾き飛ばし合うのだ。

かじき座30の中心にある大星団R136はまだ若くコア崩壊には至っていない。しかし星団が小さいほどコア崩壊が速く起こるので、小さな星団がR136と合体したと考えれば大量の暴走星の存在が説明しやすい。

研究チームでは、この領域で相互作用が起こっている星団が他にないかをさらに詳細に調べていくという。