熱いけれども密度は小さい、蒸気をまとったスーパーアース

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【2011年9月28日 スピッツァー望遠鏡

2004年に発見された系外惑星、かに座55番星の惑星eの密度が、これまで考えられてきたよりも小さいことがNASAの「スピッツァー」宇宙望遠鏡の観測によりわかった。このかに座55eは地球と近いサイズの系外惑星「スーパーアース」の1つであり、その表面は水蒸気や他のガスによって覆われていると考えられている。


かに座55eのイメージ

かに座55e(右)と地球の比較イメージ。かに座55eの直径は地球の約2倍、質量は7.8倍ある。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC))

かに座55番星は地球から約40光年の距離にある6等星だ。現在までに5つの惑星の存在が知られているが、惑星eは直径が地球のおよそ2倍、質量は7.8倍であり、地球に比較的似ている惑星「スーパーアース」の1つとして知られている。わずか17時間40分の周期で主星の周りを回っており、その表面温度は摂氏1760度にもなると計算されている。

かに座55eは、地球から見て惑星が主星の一部を隠す「トランジット観測」を行うことができる最も小さいスーパーアースとしても知られている。このトランジット観測からサイズを、そして主星と惑星のふらつき度合いを調べるドップラー法から質量を求めることで、惑星の密度を正確に計算できる。

これによって求められたかに座55eの密度は、予想よりも小さいものであった。これまでに見つかっていたスーパーアースは、温度が低く密度が小さいGJ 1214bというものや、温度が高く密度も大きいCoRoT-7bやKepler-10bといったもので、これらと比べると温度が高くて密度が小さいかに座55eは一風変わった惑星である。

「スピッツァー」の観測結果によれば、惑星の20%は水などの軽い物質によって構成されているようだ。主星から非常に近い距離(太陽〜水星間の約26分の1)にあるため、これらの物質は気体と液体の間のような超臨界流体として存在していると考えられる。

かに座55eが形成される理論は今のところよくわかっていないが、おそらく元々はもっと主星から離れたところで今よりも厚い大気をまとった状態で形成され、それが主星のそばに移動してくる過程で表面のガスを剥がされ、現在の姿になったのではないかと考えられる。

この惑星は今後、主星の重力によってばらばらになってしまう運命にあるようだ。しかし、しばらくはスピッツァーをはじめ様々な機器を駆使することで、系外惑星のより詳細な姿や、スーパーアースの内部構造、大気などについて調べることができると期待されている。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、550個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、かに座55番星が存在する方向を星図に表示できます(「ρ1 Cnc」と表示されます)。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。