超大質量ブラックホールが活発化する原因は?

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【2011年7月19日 ヨーロッパ南天天文台

ヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡(VLT)とX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」による観測の結果、過去110億年の銀河中心ブラックホールのほとんどは銀河同士の合体によって活動を始めたわけではないことがわかった。


調査に利用した領域の活動銀河

カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)で撮影したろくぶんぎ座方向の一角。赤い印の箇所が研究で使われた活動銀河。クリックで広域図表示(提供:CFHT/IAP/Terapix/CNRS/ESO)

多くの銀河の中心には超大質量のブラックホールが存在していると考えられている。天の川銀河の中心のブラックホールのように不活発なものもあれば、一部の、特に初期宇宙の銀河の中心にあるブラックホールは、物質をとりこむ際の摩擦エネルギーを放射する「活動銀河核」であることが知られている。

この「寝ている」銀河中心のブラックホールを「起こす」ものがどこから来ているのか、というのは未解決の問題だ。これまでは、銀河同士の合体や接近通過で内部の物質がかきまぜられ、そのエネルギーで活発化するという説が主流だった。

独・マックス・プランクプラズマ物理学研究所のViola Allevato氏らは、ろくぶんぎ座の方向にある600以上の活動銀河について詳細な観測を行い、活動銀河核が活発化する原因を探った。X線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」で活動銀河核が出すX線を観測し、南米チリにあるVLT(VLT)でその活動銀河までの距離を調べることで、約110億年前から現在までの、時代ごとの活動銀河の分布の違いを調査した。

すると、110億光年以内(=110億年前以降)では中ぐらいの明るさの活動銀河核ばかりで、極端に明るいものは稀であった。この結果自体は予想通りであったが、このような中ぐらいの明るさの銀河が銀河同士の合体で活発化したわけではないという驚くべき結果が示された。

銀河同士の合体によって活動銀河核ができるというこれまでの理論によれば、太陽の1兆倍程度というほどほどの質量を持った銀河の中に見つかるはずであった。しかし、活動銀河核のほとんどは、この予想よりも20倍も重い、暗黒物質が豊富な銀河の中にあったのだ。

110億年というはるか昔においても、中ぐらいの明るさの活動銀河核のうち銀河の合体によって活発化した割合は非常に低い。当時は今より銀河同士の距離が近く、銀河同士の合体は今よりももっと頻繁に起きていて良いはずであり、非常に驚くべきことである。

衝突ではないとすれば、活動銀河核を活発化させているのは、銀河の円盤の不安定性や星形成のような、銀河の中で起こる活動がきっかけなのかもしれない。