カッシーニが捉えた土星の嵐と雷の「音」

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【2011年7月7日 NASA

2010年12月に発生した大規模な土星の嵐を探査機「カッシーニ」が撮影し、その画像と雷の「音」が公開された。


2011年2月25日に撮影された土星の嵐の様子

2011年2月25日に撮影された土星の嵐の様子。嵐の発生から12週間が経っており、かなり後ろに尾を引いているのがわかる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute、以下同じ)

土星の嵐の拡大図

土星の嵐を3種類のフィルターで撮影し、人工的に色をつけたもの。左上の画像が嵐の先頭、右上の画像が嵐の中央の渦。クリックで拡大

2010年12月5日に撮影された土星の嵐の様子

2010年12月5日に撮影された土星の嵐の様子。人間の目で見たものとよく似た色で再現されている。クリックで拡大

2010年12月5日、非常に大きな嵐が土星で発生し、探査機「カッシーニ」がこれを捉えた。この土星の嵐の構造については2011年5月にも伝えているが(2011/5/25 ニュース「カッシーニと大型望遠鏡で土星の嵐を観測」)、今回は続報をお届けしよう。

この嵐は土星の北緯35度の地点で発生した。発生時点で40億平方kmという非常に大きなもので、カッシーニが2009年から2010年にかけての数か月間で見つけた嵐と比較して500倍も大きなものであった。

発生から約2か月後の2011年2月には、土星を一周してしまうほど大きく成長した。この嵐が持つエネルギーを計算してみると、なんと土星が宇宙空間に放出している熱と同じくらいあることがわかった。地球ではこれほどのエネルギーをもつ嵐は見つかっておらず、また地球を一周するような嵐も見つかっていないことを考えると、非常に大規模な嵐であることがわかる。

頻繁に嵐が発生している地球や木星と比較すると、土星はかなり違った天体のようだ。とても穏やかな時と、今見ているように非常に活発に活動しているときの両極端だと言えそうである。

土星で雷が発生すると、そこから電波が出てくることが知られている。今回の嵐でも電波やプラズマの観測装置によって、1秒間に10回以上もの雷が観測されている。しかし正確に数えようにもあまりに数が多いため、ミリ秒単位に分解できる観測装置をもってしても分けて見ることはできなかった。

この電波やプラズマの観測装置によって得られたデータから「音」を再現したものが、カッシーニのウェブサイト上(Lightning Strikes at Saturn)で公開されている。もっとも、宇宙空間は真空であるため、音は伝わらず、人工的に作ったものである。

土星は2009年までの長い間、南半球が夏、北半球が冬という季節を過ごしてきたが、今はちょうど季節の変わり目である。北半球は久しぶりの「春」を迎えており、この嵐もその季節変化によって発生していると考えられている。