ブラックホール製 銀河のペアリング

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年2月10日 Chandra X-ray Observatory

ハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線天文衛星のデータを合成した美しい銀河の画像が公開された。4億3000万光年かなたで起こる壮大な天体活動の様子をカラフルに伝えてくれている。


(Arp 147の画像)

チャンドラとHSTがとらえた「Arp 147」を合成したもの。ピンクがチャンドラによるX線像、赤・青・緑がHSTによる可視光線像。右のリングの活発な星形成(青)と、その後のブラックホールの活動(ピンク)がうかがえる。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/MIT/S.Rappaport et al, Optical: NASA/STScI)

くじら座の方向4億3000万光年先にある「Arp 147」(注1)は、渦巻銀河(画像右)と楕円銀河(同左)のペアだ。右の銀河の空洞は、左の銀河が突き抜けた跡とみられている(注2)。

画像は、チャンドラX線天文衛星のX線データとハッブル宇宙望遠鏡(HST)の可視光線データを合成して作成したもので、右のリングの青い部分は、衝突時の衝撃で形成された若い大質量の星々の存在を表している。他の天文衛星の観測データや理論モデルから見積もった結果では、リング部分は最も活発な星形成の時期から約1500万年ほど経っているとみられている。

このような大質量星は寿命が短く、数百万年ほどで超新星爆発を起こして最期をむかえ、その跡には中性子星やブラックホールが残る(注3)。その一部は伴星を持ち、強大な重力で伴星から物質を吸引する際のエネルギーがX線として放射される。リング中のピンク色の部分はそうしたX線をとらえたもので、非常に明るいことから、太陽の10〜20倍もの質量のブラックホールが存在すると考えられる。

左側の楕円銀河の中心にも、超大質量ブラックホールから放射されているとみられるX線源が検出されている(注4)。左下の赤い星や左上のピンク色に見えるクエーサー(注5)はArp 147とは無関係の天体だ。

注1:「アープ(Arp)」 アメリカ天文学者Halton Christian Arp(1923〜)が作成した、特異な形状の銀河のカタログに掲載されている天体。

注2:「銀河の貫通」 このような銀河としては、ちょうこくしつ座の「車輪銀河」が有名。

注3:「中性子星・ブラックホールの形成」 中性子星は太陽質量の8〜30倍の星の名残、ブラックホールは太陽の30倍以上の星の名残とされる。

注4:「銀河中心のX線源」 画像ではいくつかの波長を合成してあるためわかりにくい。各波長ごとの単独画像は、下記〈参照〉のリンクから見ることができる。

注5:「クエーサー」 通常の銀河数十個分のエネルギーを放出していると考えられる遠方の天体。正体は明らかになっていないが、大質量ブラックホールをエネルギー源としているとする説が有力。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」よりサンプルページ

〈参照〉

〈関連リンク〉

〈関連ニュース〉

〈関連商品〉