天の川銀河の将来

【2009年9月7日 Ohio State University

天の川銀河のような渦巻き銀河と大小マゼラン雲のような伴銀河との間で起こる衝突のシミュレーションで、天の川銀河の将来の姿が再現された。


伴銀河と衝突した天の川銀河のシミュレーション画像

伴銀河と衝突した天の川銀河のシミュレーション画像。クリックで拡大(提供:Stelios Kazantzidis, Ohio State University)

伴銀河と衝突した天の川銀河の予想図

伴銀河と衝突した天の川銀河の予想図。左が衝突前、右が衝突後で、色は明るいほど物質の密度が高いことを示す。クリックで拡大(提供:Stelios Kazantzidis, Ohio State University)

銀河は衝突を繰り返して進化し続けてきたと考えられている。また衝突によって銀河が破壊されたり、接近で形が大きく変化したりすることもある。影響はそれほど大きくないにしても、銀河はそのまわりを回る伴銀河と衝突することもある。将来われわれの天の川銀河は、伴銀河との衝突でどんな影響を受けるのだろうか。

米・オハイオ州立大学のStelios Kazantzidis氏らの研究チームが、天の川銀河のような渦巻き銀河と銀河のまわりを回る大小マゼラン雲のような伴銀河との間で起こる衝突のコンピュータ・シミュレーションを行い、衝突がそれほど恐ろしいものではないことを示した。

すべての銀河は、巨大なダークマターのハローに取り囲まれている。ハローとは、銀河のまわりを球状に取り巻く構造のことである。ちなみに、直径が約10万光年ある天の川銀河のまわりには、その10倍にあたる、直径100万光年の領域に広がるダークマターのハローが存在する。さらに、ダークマターは巨大な網の目状の構造を成しており、大きな銀河は構造の交わる領域に集まっている。一方、小さな伴銀河も、ダークマターに支配されていて、糸にそって動き、大きな銀河の重力に引き寄せられて、そのまわりを回っている。

シミュレーションの結果、伴銀河が渦巻き銀河に落ち込みながら徐々に破壊されて、やがて渦巻き銀河の一部となることで、円盤の縁が膨み、銀河の周囲に輝く星のリングが形成されたという。そのため、衝突後の渦巻き銀河は、外縁部に密度の低いリング状の構造が見られ、円盤は膨れあがったように見え、そのほか棒構造、円盤上方には繊維状の構造も見られた。この姿は、われわれの天の川銀河の現在の姿にとてもよく似ているという。また、星から成るリングはこれまで多くの渦巻き銀河のまわりに観測されている。