フェニックス、通信途絶え探査終了へ

【2008年11月13日 JPL

NASAの火星探査機フェニックスは、11月2日を最後に通信を絶ったままである。NASAは、探査機との交信が復活する可能性はないと見ており、ミッションの終了を発表した。


(探査を行うフェニックスの太陽電池パネルとロボットアームの画像)

探査を行うフェニックスの太陽電池パネル(左)と土壌をすくいあげたロボットアーム(右)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Calech/University of Arizona )

(6月15日(左)と18日(右)にとらえた土壌の画像)

6月15日(左)と18日(右)にとらえた土壌。塊のうち数個が消えてなくなったことが、これらの画像から明らかとなった。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Calech/University of Arizona/Texas A&M University)

フェニックスは、今年5月火星に着陸して以来、当初の予定より2か月以上長い5か月もの間活動を続けてきた。しかし、9月の末ごろからは、季節の変化により日射量が減少。そのため電力の供給がじゅうぶんでなくなり、不安定な状態が続いていた。そして、11月2日の通信を最後に、活動を完全に停止したようだ。

フェニックスのプロジェクトチームでは、今後数週間は、再び信号が届くかどうか慎重に見守る予定だ。しかし、火星の北半球では、秋のおとずれに伴って上空の雲も多くなり、気温は下がり天候は悪化する一方である。そのため、再びフェニックスから信号が届く可能性はないと見ている。

しかし、活動の停止は想定内のことである。探査は終了しても、フェニックスがこれまでに集めてきた多くのデータがある。その中には、2万5000枚以上にのぼる画像のほかに、気温や気圧、湿度や風力など天候に関するデータなども含まれている。

フェニックスの主任研究員である、アリゾナ大学のPeter Smith氏は、「フェニックスは、われわれに驚きをもたらしてくれました。今後の数年間で、データという宝の山から、新たな宝石が発見されると確信しています」と話している。

また、フェニックスの探査で重要な発見といえば、水の氷や弱アルカリ性の土壌、さらに液体の水が流れていた証拠と考えられる炭酸カルシウムや、土壌に含まれる高濃度の過塩素酸塩などもあげられる。

NASAの火星探査プログラムマネジャーを務めるDoug McCuistion氏は、「フェニックスによる探査は、火星に生物を育む環境が存在したかも知れないという期待を後押しする重要な一歩となりました。2009年秋に打ち上げが予定されている火星探査車マーズ・サイエンス・ラボラトリとともに、今後も火星探査は休むことなく続きます」と話している。