宇宙の花火は輝き続ける − X線観測衛星チャンドラがとらえた4つの超新星残骸

【2006年7月6日 Chandra Photo Album

超新星爆発はもっとも派手な天文現象の1つだが、爆発の輝きが消えた後も、周囲の加熱されたガスは輝き続ける。超新星残骸と呼ばれる天体だ。NASAのX線天文衛星チャンドラが撮影した超新星残骸の花火のような画像が、一挙に4つ公開された。


(4つの超新星残骸の画像)

チャンドラが撮影した4つの超新星残骸。左上から左下へ時計回り順に:SNR 0519-69.0、SNR 0509-68.7、SNR 0534-69.9、SNR 0453-68.5。クリックで拡大(提供:NASA/CXC/SAO)

画像が公開された4つの超新星残骸(解説参照)は、いずれも天の川銀河の伴銀河・大マゼラン雲にある。地球からの距離はおよそ16万光年だ。画像は、3種類のエネルギーに相当するX線を捉え、エネルギーが低い順に赤、緑、青で着色したもの。爆発の衝撃波によって数百万度に加熱されたガスの輝きだ。

爆発後に経過した時間は、左上が600年、右上が1500年、右下が10000年、左下が13000年である。縮尺の関係で4つとも同じ大きさに見えるが、実際には古く爆発した残骸ほど大きく広がっている。4つの正方形画像は、それぞれ1辺が見かけの大きさ1.85分角、2.4分角、8.8分角、8.7分角に相当する(1分角は1度の60分の1)。

左下の画像のみ、中心付近に青白い光が見える。中性子星とそこから放出されている高エネルギー粒子だ。この残骸を作り出した超新星爆発は「II型超新星」に分類される。II型超新星とは、質量がひじょうに大きい恒星が核融合反応エネルギーで自身を支えきれなくなり、中心核が収縮すると共に外層が吹き飛ばされるタイプの超新星だ。収縮した中心核が、中性子星となったのである。

一方、他の3つの残骸には中性子星が見あたらない。X線スペクトルの分析から、3つの残骸を生んだ爆発はいずれも「Ia型超新星」だと判明した。他の星と連星になっている白色矮星に、相手の星からガスが流れ込むことで、白色矮星が不安定になって暴走的な核融合が起きるのがIa型超新星の正体だ。爆発の結果、白色矮星はばらばらになるため超新星残骸の中心には何も残らないのだ。

超新星は、地球や生命の材料にもなった重い元素の起源でもある。チャンドラは数多くの超新星残骸を撮影しており、残骸中の温度や衝撃波のエネルギーの他に、どんな元素がどのように広がっているかを調べている。

超新星残骸

超新星の爆発で吹き飛んだガスがつくる残骸。球殻状に広がりながら周囲の星間ガスと衝突し、その衝撃波でガスが加熱されるなどしてX線や電波を発している。かに星雲をはじめとして、はくちょう座の網状星雲、ケプラーの超新星残骸、ティコの超新星残骸などが有名である。(「最新デジタル宇宙大百科」より)